先日、収用を行う予定の土地3筆に環境衛生金融公庫名義の抵当権が3つずつ設定されていたので、抵当権抹消登記のご依頼がありました。
「たかが抹消、されど抹消」です。住宅ローンの抹消のような簡単なものもありますが、放置されているものはそれなりに難しいものもあるのです。
少々珍しい登記だったため、今回も自身の備忘録としてブログを書かせていただきます。
【登記記録】
A土地 1番抵当権 環境衛生金融公庫
2番抵当権 環境衛生金融公庫
3番抵当権 環境衛生金融公庫
B土地 1番抵当権 環境衛生金融公庫
2番抵当権 環境衛生金融公庫
3番抵当権 環境衛生金融公庫
C土地 1番抵当権 環境衛生金融公庫
2番抵当権 環境衛生金融公庫
3番抵当権 環境衛生金融公庫
まず、これらの登記を何件の登記申請を行うことができるか?ですが、1件で申請することができます。
細かい条文の説明は割愛しますが、同一の土地上に同一名義人が複数の抵当権を抹消する場合は一括して申請することができるのです。
なぜ一括申請するのかというと、抹消登記は1不動産につき1,000円の登録免許税がかかるため、一括申請をした方が安上がりとなり、お客様のメリットになるからです。
つまり、今回は3筆の不動産があるので3,000円で済みます。これを共同抵当権ごとにばらばらに抹消すると9,000円かかってしまうのです。
さて、本題ですが、環境衛生金融公庫は現在存在しません。環境衛生金融公庫が辿った経緯は以下の通りです。
環境衛生金融公庫
↓
平成11年10月1日 国民生活金融公庫に承継
↓
平成20年10月1日 株式会社日本政策金融公庫に承継
移転登記がなされていればなんの問題もないのですが、今回は環境衛生金融公庫の名義のままでした。
さらに、平成11年10月1日以前にすでに解除済みで、かつ、原契約書などの登記済証はすべて紛失しているとのことでした。
よって、株式会社日本政策金融公庫が抹消登記義務を承継していますので、移転登記を経ることなく直接事前通知制度を利用して抹消することとしました。
申請内容は以下の通り
登記の目的 抵当権抹消
原因 平成11年9月30日解除
抹消すべき登記 (省略)
権利者 (所有者の表示)
義務者 環境衛生金融公庫
上記承継会社 株式会社日本政策金融公庫
代表取締役 (省略)
登記識別情報を提供できない理由:その他(紛失)
添付書類
登記原因証明情報(甲銀行の某支店長押印の解除証書)
代理権限証明情報(当事者の委任状及び日本政策金融公庫から甲銀行への包括委任状)
会社法人番号(省略)
業務権限証明書(甲銀行から某支店の支店長への業務権限証明書)
印鑑証明書(日本政策金融公庫の印鑑証明書)
※事前通知のため必要。
※甲銀行の印鑑証明書は不要。
承継証明書(平成11年10月1日国民生活金融公庫法附則第3条第1項及び平成20年10月1日株式会社日本政策金融公庫法附則第15条第1項による承継により添付省略)
以下省略
このような申請書となりました。
かなり騒がしい申請書ですね(笑)
承継が2段階になっていますし、包括委任状と業務権限証書によって「代理の代理の代理」のような形での申請ですので、ちょっと珍しかったです。
通常の会社の場合は、承継前に会社の商号や本店に変更がないか証明しなければならないため、閉鎖謄本を添付しなければなりません(相続登記の際の戸籍の附票を添付するのと同じ理屈)が、今回は元国の機関の承継ということで官報にも記載があり公知の事実のような意味合いで添付が不要とのことでした。
検討事項の多い抹消登記でしたので、今後のために書き残しておきます。
(※案件によってケースバイケースですので、ブログ記事に関するご質問には回答しかねます。参考にされる場合は、自己責任お願いします。)
読んでいただいた方、ありがとうございました!(^^)!