先日ちょっとレアな登記を経験しましたので、備忘録として記載させていただきます。専門的な記述になります。
事例 ※実際の事例よりかなり簡易に書きます
登記名義人 A(昭和60年死亡)
Aの相続人B(平成29年死亡)
Bの相続人C
上記の状態で、亡Aの相続については、昭和60年当時の遺産分割協議書があり、協議の結果Bが当該不動産(農地)を取得するという内容でした(当時、なぜか一部の不動産についてのみ相続登記をしており、一部登記していないものがあった)。
その上で、Bが相続人ではないD・E・F・Gに対して4分の1ずつ包括遺贈するという公正証書遺言を遺していたのです。
なお、遺言執行者はEと指定されています。
D・E・F・Gの希望としては、D一人の名義にしたいという希望があります。
・・・さて、論点が盛りだくさんです(笑)
私が思い当たる論点は以下の通り。
①包括遺贈の場合、農地法の許可の要否。
②亡A名義→亡B名義への相続人による登記を行う際、保存行為として申請者となるのは、Bの相続人であるC?それとも包括受遺者?
③そもそも全員相続人でない包括受遺者間での遺産分割は可能か。
④遺産分割が可能として、亡B→Dにショートカットして登記できるか。それとも一度D・E・F・G名義を経由しなければならないか。
⑤包括遺贈による所有権移転登記の登録免許税は?
⑥遺産分割による持分移転登記の登録免許税は?
1つずついきます。
①は、受験時代に覚えていたので、包括遺贈の際は許可不要と覚えていたのでクリアしました。また、それを前提とする年月日遺産分割を原因とする持分移転も当然許可不要です。
②については迷いましたが、実際の申請は相続人であるCからしました。実際それで登記は通りましたが、法務局から電話があって、「包括受遺者からの申請が適切ではないですか?」とのご指摘がありました。協議の結果、まあ保存行為としてどちらの申請でもOKだろうということで決着がつきました。
③は、相続人と同一の地位で遺産分割に参加できるのは明白ですので、もちろん可能ですね。ただ、全員相続人ではな包括受遺者間での協議ということで「んー?」と一瞬なりました。
④については、登記研究でショートカットできないという記載がありました。以下の通り。
複数の包括受遺者間において遺産分割が成立した場合でも、遺産共有状態の登記を経由した上で、目的不動産の取得者に対する持分移転登記をしなければならない(登記研究571号75頁)。他方、一部包括受遺者と相続人との間において遺産分割が成立した場合に遺産共有状態の登記を省略できるかについては明らかでないが、受遺者と相続人との共有状態を登記する場合には、先に遺贈による一部移転を、その後に相続による残部の移転を申請しなければならない(昭和30年10月15日民甲第2216号)。
⑤については、1000分の20とすぐにわかったのですが、⑥の遺産分割の際には、1000分の20と1000分の4どっちだ?!となりましたが、相続人以外ということで、⑥も1000分の20のようです。
以上、論点盛りだくさんの司法書士冥利につきる登記がありました。
(※案件によってケースバイケースですので、ブログ記事に関するご質問には回答しかねます。参考にされる場合は、自己責任お願いします。)
今後また出てきたら一瞬で判断できるのでパワーアップできました(^^♪でも、もう一生会えない事例かも?!笑