親権者(法定代理人)と未成年者が共有している不動産を、親権者だけで売却できるか?
結論からいうと、可能です。
先日の不動産取引で以下のような登記がありました。
【甲不動産の所有者】
父 8分の6
子A 8分の1
子B 8分の1
この甲不動産を買主Xに売却する案件でした。なお、AとBは未成年者です。なぜ未成年者が共有者になっているかというと、元々父母で共有だったのですが、母は他界してしまったため、相続により、未成年者との共有状態となってしまったのです。
父が子Aと子Bの共有持分についてまで、勝手に売却してもよいのか?とちょっと疑問がわきそうですが、可能です。通常では、父母の共同親権者により売却することになるので、子Aと子Bの持分売却には父母双方で行う必要がありますが、本案件では母が他界されているため、父の単独親権です。よって、父のみで手続きすることになります。
利益相反のようにも感じる方もおられるかもしれませんが、利益相反には該当しません。以下の先例等があります。
【先例】昭23・11・5民甲2135(未成年者と親権者の持分を同時に売却)
〔照会〕親権者が未成年者と共有の不動産を自己の持分と共に未成年者に代わって、その持分を同時に売却する行為は民法第826条第1項に所謂利益相反の行為に該当するでしょうか。
〔回答〕利益相反の行為に該当しない。
【登先317・77】
親権者と複数の未成年の子と共有の不動産を、自己の持分と共に未成年の子に代わってその持分を同時に売却する行為は、利益相反行為に該当しないので、2人目以下の子について特別代理人を選任する必要はない。
売買契約書の売主署名欄は、例えば次のような記載となります。
「共有者 父の氏名、共有者 子Aの法定代理人 及び 共有者 子Bの法定代理人 (父の氏名)㊞」
※母が健在の場合は、母も法定代理人として署名押印が必要となります。
登記原因証明情報は次のように記載しました。無事、登記も問題なく完了しました。
(※参考程度にお願いします。本記事を参考にしても当事務所は一切の責任を負いません。)
「登記原因証明情報」
令和○年○月○日
○○法務局 御中
1 登記申請情報の要項
(1)登記の目的 共有者全員持分全部移転
(2)登記の原因 令和○年○月○日売買
(3)当 事 者 権利者 X
義務者 父、子A、子B
(4)不動産の表示 (省略)
2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)子A及び子Bは未成年者であり、父は子A及び子Bの法定代理人である。
(2)令和○年○月○日、買主Xと売主父、子A及び子Bの法定代理人父は、本件不動産につき、売買契約を締結した。
(3)上記売買契約には、所有権は売買代金全額を支払ったときに移転するという特約が定められている。
(4)上記売買契約に基づき、買主Xは売主父に対して、令和○年○月○日に売買代金全額を支払った。父は子A及び子Bの法定代理人として、子A及び子Bの売買代金もあわせて受領した。
(5)よって、同日、父、子A、子BからXに本件不動産の所有権が移転した。
上記の登記原因のとおり相違ありません。
共有者 父、共有者 子Aの法定代理人 及び 共有者 子Bの法定代理人
(住所) 父の住所
(氏名) 父の氏名 ㊞
法律を勉強された方であれば当然のことですが、初めての方はなかなかわからないこともあろうかと思います。当事務所においても、未成年者の不動産売却はそうそうあるものではありませんので、記事にしてみました☺