またもや来ました、珍しい登記を経験しましたので書き残しておきたいと思います。今回の手続きを忘れているであろう10年後の自分のために…(笑)
司法書士業界には約10年おりますが、開業してから珍しい手続きを多くさせていただいております。不動産取引、住宅ローンや贈与手続きなどのよくある手続きはもちろん慣れておりますが、今回のような珍しい手続きをさせていただくことで専門家として深みがでるってもんですね(^^♪
難解な手続きどんと来い!!
今回の手続きは「賃借権設定登記」と「賃借権質権設定登記」でした。
賃借権設定登記はたまにあります。例えば、事業用借地権(コンビニやガソリンスタンドが土地を借りるなど)のときなど登記することもありますが、賃借権を目的として質権設定を行うのはちょっと珍しいですね。
※抵当権は物権(所有権、地上権、永小作権)にしか設定することができませんが、質権は債権(指名債権や賃借権)にも設定することができるのです。
今回はなぜこんなことをする必要があったかというと、土地の所有者から事業者が土地を借りて太陽光パネルを設置し、その事業者が借りている権利を銀行が担保を取って融資をしたのです。
登記原因証明情報の概要は以下の通りです。
1 登記申請情報の要項
(1)登記の目的 1番賃借権質権設定
(2)登記の原因 平成〇年〇月〇日金銭消費貸借
平成〇年〇月〇日設定
(3)当 事 者 権利者(甲) (本店)
(商号)A
(代表取締役)
義務者(乙) (住所)
(氏名)B
(4)不動産の表示
〈省略〉
2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)平成〇年〇月〇日、甲と乙は、下記内容の金銭消費貸借契約を締結し、同日、甲は乙に対し、本契約に基づく金銭を貸し渡した。
債権額 金〇〇万円
損害金 年〇〇%(年365日の日割計算)
債務者 B
(2)平成〇年〇月〇日、甲と乙は、上記記載の債権を被担保債権として、下記賃借権質権設定契約を締結し、本件土地賃借権(平成〇年〇月〇日法務局受付第〇〇号登記済み)の上に第1順位の使用収益禁止特約付の質権を設定した。
(3)本件不動産の所有者であるZは、本件土地賃借権(平成〇年〇月〇日法務局受付第号登記済み)への賃借権質権設定を異議なく承諾した。
質権の表示
〈省略〉
まず、一つのポイントとして、原則として質権の成立要件に「引き渡し」がありますので、登記の原因となる事実又は法律行為の要件として引き渡しの旨を記載すべきではないか?との疑問がありますが、今回は使用収益禁止の特約があるため、そもそも引き渡しが必要ありませんでした。
法務局の方からも「引き渡し」について言及がありましたが、結局引き渡しがなくても質権は成立しているということで通りました。使用収益をしないのであるから、そもそも引き渡しをする必要がなく、諾成契約になるということですね。
所有者の承諾書(印鑑証明書付き)を添付したことと、登録免許税は質権の債権額×1000分の4だということくらいでしょうか。
所有権に設定する質権とは違い、賃借権質権は付記で登記されるので「うーん、1,000円かな?」とも悩みましたが、通常どおり債権額×1000分の4でした。
登記完了後の全部事項証明書はこんな感じです
(※案件によってケースバイケースですので、ブログ記事に関するご質問には回答しかねます。参考にされる場合は、自己責任お願いします。)
実務書にも載っていないような登記ですが、そんなマイナーな登記も軽々こなすのがプロってもんですよね☺これからも精進します!!