【法改正】2019年1月13日から自筆証書遺言の方式が緩和されました

2019年1月13日から自筆証書遺言の方式が緩和されました。

 そもそも自筆証書遺言というのは、法律で決められた形式どおりに書かなければ無効となりますが、その要件が一部緩和されたのです。

 

画像は著作権フリー © タイトル:ブラックジャックによろしく 著作者名: 佐藤秀峰

 

2019年1月12日までの方式【旧法】

 2019年1月12日までの自筆証書遺言が有効となる要件としては、「全文自書」で「日付」「氏名」「押印」があれば、有効とされておりました。これらの要件が1つでも欠けていれば、どんなに丁寧に内容を書いたとしても無効です。

 

 私が実際に出会った遺言書の中には、内容をパソコンで作成し、氏名のところだけ自書し、実印が押印してあり、さらに印鑑証明書まで添付されてあるものがありました。

 

さて、この遺言書は有効だと思いますか?

 

この自筆証書遺言は無効です。なぜなら、有効となる要件の1つである「全文自書」の要件が満たされていないからです。その自筆証書遺言書を持ってきた相続人の方は、泣く泣く法律で定められたとおりの持分で相続をしなければならない羽目となってしまいました。

 

 ちなみに、自筆証書遺言は勝手に開封してはいけません。映画のイメージで、遺言書は相続人が全員集まったところで弁護士が開封して読み上げるものだと思っていませんか?実は勝手に開封してしまうと5万円以下の過料を処されます。意外な規定が民法にしっかりと規定されているので、ご注意ください。

 

それでは、封筒に入っていない遺言書は無効なのか?といえばそんなことはなく、封筒に入っていない裸の遺言書であっても有効です。なぜなら、民法に「封筒に入っていなければ無効」とはどこにも書かれていないからです。ただ、普通の感覚として、封筒に入れますよね(笑)

 

他にも意外なところとしては、「鉛筆で書いていても有効」であることや「実印ではなく、認印、拇印でも有効」などがありますが、いずれも真実性が確認できないと主張される可能性がとても高いので、いずれも避けるべき方法です。逆に、自書である必要性から、点字機で打った遺言やテープレコーダー・動画による遺言は無効です。このように意外に思われるような細々とした規定や判例が数多くありますので、わからないことがあったら速やかに司法書士等の専門家に相談したほうが賢明です。

 

2019年1月13日からの新方式

 2019年1月13日からの新方式は今までの自筆証書遺言が有効となる要件であった「全文自書」で「日付」「氏名」「押印」がある、のうち「全文自書」という要件を一部緩和しました。

 

 具体的な内容としては、全文自書ではなく、「財産目録」の部分についてはパソコンで作成したり、銀行通帳のコピーを添付したり、不動産の登記事項証明書のコピーを添付したりしてもOKになりました。なお、この場合、遺言者は自書ではない部分があるすべてのページに署名・押印をしなければなりません。自書ではない部分がその紙の両面にある場合においては、その両面に署名・押印が必要です。

 

 ちなみに、遺言書が複数枚になる場合において、契印(書類が連続していることを示すために、紙と紙の間に重なるように押印すること)をしていることは有効となる要件にはなりませんでした。つまり、契印がなくても有効ということです。これは2019年1月12日以前でも同じですが、遺言書に契印があることを要件にしてしまうと、無効となる遺言書が多発して実務が混乱する可能性が高いために要件から外れました。とはいえ、契印がある文書が正式な法的文書ですので、皆さまが自筆証書遺言書を作成する場合は必ず契印をして作成してください。

 

 自筆証書遺言の内容に加除・訂正する場合には、厳格に方式が決められています。具体的には、遺言者が、①加除・訂正の場所を指示し、②これを変更した旨を付記して特にこれを署名し、かつ、③その変更の場所に印を押印しなければならないとされています。

 

これらの具体的な記載方法は次の資料を参考にしてください。

※画像は法務省ウェブサイトより

 

改正後方式のメリット・デメリットとは?

 一見、いいことづくめに見える法改正ですが、私の個人的な意見を述べさせていただくと、無効な遺言書が今まで以上に増えると考えています。この自筆証書遺言に関する改正は、確かに書くことが減って負担は軽減されますが、かえって書き方が難しくなったように思います。

 

 例えば、自書でなくてもよくなったのは「財産目録」の部分についてだけです。何を誰に相続させる等を記載する「本文」については、ちょっとでもパソコンで作成してしまうとすべては無効な遺言書となってしまうのです。一般の方の中には「改正でパソコンで作成してもよくなったんだ!」と勘違いされる方も相当数おられるのではないかと私は危惧しています。

 

 さらにいうと、筆者が実務上今まで見てきた自筆証書遺言の中で「財産目録」が詳細に書かれているものはそこまで多くありません。むしろ、よほどの資産家でない限り、ほとんど書かれていないといってもいいかもしれません。

 

 

 実際の自筆証書遺言で多いのは、「一切の財産を妻A子に相続させる。」であったり、せいぜい「すべての不動産は長男Bに相続させる。その他の一切の財産は妻A子に相続させる。」や「甲不動産は長男Bに相続させる。乙不動産は二男Cに相続させる。」など、割とざっくりしたものが多いのが現状です。財産が多岐に渡り、それを詳細に分け与えたいという方については、今回の改正はメリットですが、専門家からすればその場合は公正証書遺言を作成すべきケースといえるため、自分だけで自筆証書遺言を作成することは全くおすすめできません。

 

 この改正による恩恵をうける層はそう多くはないのではないか?むしろ、無効な遺言書の作成を助長してしまうのではないか?というのが私の見解です。繰り返しになりますが、公正証書遺言を作成することをオススメいたします。

 

相続法改正に関するセミナー・講演等承りますので、お気軽にご連絡ください☺

 

2020年7月10日から始まる「法務局での自筆証書遺言の保管制度」の条文を読んでみましたが、メリットばかりではありません。公正証書遺言と比べると、大きなデメリットがありますので解説します。

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