所有権抹消登記の登記原因証明情報・申請書【法改正により錯誤から取消へ】

令和2年4月1日から施行された民法の改正により、登記実務にも様々な影響がありました。その1つに民法95条の錯誤があります。

 

改正前までは錯誤を原因として所有権抹消登記をする際には、登記原因は「錯誤」とだけ記載して年月日の記載はしませんでしたが、改正後は取消の意思表示が到達した日を原因日付として「年月日取消」と記載します。

 

手持ちの書籍に法改正後のひな形がなかったので、専門家らしく一から登記原因証明情報を作成して登記申請をしましたので、個人的な備忘録として残しておきます。

(ちなみに、本所有権抹消登記申請の対象となる所有権移転登記は私が申請したものではなく、元々は他の専門家が手掛けたものでした。)

 

以下が、実際に登記申請に使用した登記原因証明情報及び申請書の内容です。

※各登記官の判断によりますので、確実に登記が認められることを保障するものではありません。案件によってケースバイケースですので、ブログ記事に関するご質問には回答しかねます。参考にされる場合は、自己責任お願いします。

 

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登記原因証明情報

 

令和〇年〇月〇日

〇〇法務局 御中

 

1 登記申請情報の要項 

(1)登記の目的       所有権抹消

(2)登記の原因       令和〇年〇月〇日取消

(3)当 事 者        権利者 (甲)   

                          義務者   (乙)

(4)不動産の表示 (省略)

 

2 登記の原因となる事実又は法律行為

(1)所有権移転登記

権利者を乙、義務者を甲として、本件不動産につき所有権移転登記(令和〇年〇月〇日〇〇法務局受付第〇〇号)がなされている。

(2)贈与契約の不存在

上記(1)の登記原因たる令和〇年〇月〇日贈与契約の事実はなく、そもそも不存在であり錯誤に基づくものである。

(3)よって、本件土地に所有権移転の事実はないため、乙は贈与を取り消し、甲はその意思表示を令和〇年〇月〇日受領した。

(4)抹消登記申請の合意

現在の所有権登記名義人である乙は、上記(1)乃至(3)の事情を自認し、令和〇年〇月〇日取消を原因として所有権抹消登記を申請する旨、前所有権登記名義人甲と合意した。

 

 上記の登記原因のとおり相違ありません。      

 

           (義務者)(乙)

 

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登記申請書

登記の目的  所有権抹消

原因 令和〇年〇月〇日取消

抹消すべき登記 (省略)

権利者 甲

義務者 乙

添付情報       
登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書 (代理権限証書)

令和〇年〇月〇日申請 〇〇法務局 御中

登録免許税 金1,000円(1筆につき1,000円)

不動産の表示(省略)

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なお、本事案においては、所有権移転登記のあと1月1日をまたいでの所有権抹消登記でしたが、贈与税申告前に所有権抹消登記を完了させたうえで申告すれば、贈与税は課されない取り扱いがされるようです。しかし、これはケースバイケースであり、税務署の判断によりますので、必ず税務署や税理士にご相談のうえ手続きしてください。

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