特に遺言を遺した方がいい人はこんな人(その1)

遺言作成を特におすすめしたいケース 

私が多くの相続相談を受ける中で、遺言書のお話をすると必ずといっていいほど返ってくる言葉があります。

 

「うちには大した財産持ってないから、遺言書なんていらないわよ。

 

という言葉です。遺言書を作成しておくべきかどうかの判断を、財産の多い少ないという物差しだけで判断するのは危険です。

 

最近特に遺産相続に関するトラブルについて、新聞やテレビなどのメディアで取り上げられることが多くなっています。実際、平成26年の司法統計によると、全国の家庭裁判所での相続関係の相談が年間17万件以上寄せられ、10年前と比べ約2倍に増えていると発表されました。相続問題といえば、「お金持ちの人だけが関係する問題」といったイメージを抱く人が多いかもしれませんが、実はデータで見てもお金持ちだけに限った話ではありません。

どのような人が家庭裁判所で相談しているかというと、自宅等の不動産を含めた財産の総額が5000万円以下の人が75%であり、財産総額が1000万円以下の人が32%も占めるのです。意外にも、ごく一般的な家庭で相続問題は起きているのです。これはあくまでも私の経験に基づく私見ですが、割合的には、お金持ちの人ほど相続で揉めていません。理由としては、大きく3つあると考えています。

 

お金持ちの人は・・・

  • 揉めることを想定して相続対策をしっかりと行なっていることが多い
  • 子供もそれぞれお金持ちであることが多い(金持ちケンカせず)
  • お金持ちは、お金持ちのところに嫁いでいることが多いので、配偶者も口を出さない

 

①②はなんとなく分かると思いますが、遺産争いで「あるある」なのが、③の「配偶者が口を出してくる」ということです。

兄弟姉妹は仲が良く、都会に出た弟は「兄貴が親の面倒をよく看てくれたから、もう兄貴にほとんど譲ってもいいと思ってるんだよね」と言っていても、弟の妻は「いやいや、あなた何言ってるの。法定相続分は必ずもらえるのだから、ちゃんともらってよね。もうすぐ子供が大学に入学するんだし…。」と配偶者が遺産分割の話し合いに口を出してくると、ほとんどの場合揉めます。

 

それを言い出すと、今度は兄の妻が黙っていないのです。

親の介護をした兄の妻からすれば、「親の介護を一切手伝ってくれなかった人がなんてことをいうの?これだけ尽くしたのに、完全に平等を主張してくるなんて許せない!」と、こうなるわけです。

 

どちらの言い分もよくわかります。経験上、烈火のごとくに争い合っている相続人の方と個別に話せば皆さんとてもいい人です。しかし、家族の歴史というか、過去にあった様々なちょっとしたわだかまりが、この「相続」を引き金として一気に噴き出すのです。

 

介護をした相続人には、寄与分(※1)が認めれる場合もありますが、揉めてしまうと寄与分の算定が難しかったり、認められなかったりする場合も多くありますので、やはり介護をされる親としては遺言の作成を考えるべきといえます。たとえ、平等に相続させたいとしても、「こういう理由で平等に相続させたい」という気持ちを遺言に書いておくことで、相続争いを回避できる可能性が高まります。

(※1)寄与分とは、故人(被相続人)の「財産の維持や増加に貢献した相続人」は、寄与分(きよぶん)として相続財産の増額を主張することができます。

 

私が様々な遺産争いを目の当たりにしたときに、共通して感じることは、「親への感謝の気持ちが足りない」ということです。親の生前にどんなに仲がよくても、遺産相続争いをするのなら、それは親の責任でもあると思いますし、結果的には子育て失敗ともいえるのではないでしょうか。

よく、相続で一度揉めると兄弟の仲は戻らないと言われます。相続におけるケンカは、普通のケンカとは違うのです。大切な親を失ったきっかけで、兄弟の縁が切れてしまうことほど悲しいことはありません。そうならないためにも、今しっかりと家族と向き合って、相続の準備しておきましょう。

 

 

次のチェックリストの中に1つでも当てはまる方は、遺言書を作成しておくことを強くオススメいたします。これらのどれか1つでも当てはまる場合は、遺言書を作成しておかないと遺された相続人の方および関係者はとても苦労をすることになりますので、公正証書遺言の作成をご検討ください。

 

公正証書遺言も一度作成したら変更できないわけではなく、いつでも何度でも書き換えることができますので、思い立ったらまず作成しておくと良いでしょう。気が変わったらまた書き直せばよいのです。

 

当てはまる項目に☑してください。

 

□ 夫婦の間に子供がいない。

□ 離婚歴があり、前妻(前夫)との間に子供がいる。

□ 内縁関係(事実婚)である。

□ 推定相続人(相続人になる予定の人)の中に認知症の方や行方不明の方がいる。

□ 土地・建物を所有している。

□ 自営業・会社経営をしている。または、農業を営んでいる

□ 子供のうちの1人と同居(または介護)している。

□ 子供の仲が良くない。

□ 自分の相続で家族に面倒な手続きをさせたくない。

□ 相続人の数が多い。

□ 子供間に経済的な格差がある。

□ 相続人以外の人に遺産を遺したい。または、寄付がしたい。

□ 相続人が全くいない。

 

いかがでしたか?

それでは次回、それぞれ個別に解説していきます。

お楽しみに!

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