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【相続人申告登記】表題部しかない登記記録の場合、前提として所有権保存登記が必要です!
令和6年4月1日から、新たに相続人申告登記が始まりました。この制度は、相続によって土地や建物の所有者が変更となった場合に、その所有権移転したことを申請するもの(いわゆる相続登記)ではありません。正確には、所有権の登記名義人の相続人からの申出に基づき、登記官が職権で申出があった相続人の住所・氏名を付記するものです。これにより、所有者が亡くなった後の相続人の情報が登記簿に記録されますが、権利関係を公示するものではありません。
この相続人申告登記を行う1番のメリットは、相続登記をしていないことによる10万円以下の罰金(過料といいます)を回避できることです。
相続人申告登記は、権利部において付記登記として記録されるため、表題部しかない登記記録についてはこの申告登記を行うことができません。
表題部しかない不動産について相続人申告登記を行うためには、前提登記として所有権保存登記を申請する必要があります。この所有権保存登記を行うことで、初めて権利部に所有権が記録され、その後に相続人申告登記が可能となります。
相続人申告登記を行う場合は、ご注意ください☺
1週間の海外研修へ!(シンガポール・ベトナム)
6月2日から8日まで、いよぎん地域経済研究センター様主催のニューリーダーセミナーの海外研修旅行(シンガポール・ベトナム)に行ってまいりました!
シンガポールは入国手続きのIT化も進んでおり、物価の高さ、先進性まで、日本が遅れていることを肌で感じました。特に世界2位の港湾物流量を誇るPSAは圧倒的でした。
ベトナムはまだ発展途上な部分は多くありましたが、国民の平均年齢は31歳と若く、人口も1億人おり、街中がエネルギーに満ち溢れていました。きっと20年もすればとんでもない発展を遂げるでしょう。日本も負けてられません!
残念ながらベトナムでは体調不良になってしまって2日寝込んだので(笑)企業の視察ができず、レポートが書けない😭でも、街の勢いだけでも感じられてよかった。
そして何より、同期がいい人ばかりでほんと参加してよかった。きっと長い付き合いになります😌
ホントこんな贅沢な勉強ができるのも、家族と従業員のおかげです。今後この経験を活かして、まずは身近な人・地域に貢献していきたいと思います。
エンディングパートナーがラジオドラマ「うっちゃり横綱道 前田山英五郎」のスポンサー&鯱の里の役に挑戦!
【3年ぶり】サロンでの講演でレベルアップを実感
毎週金曜日10時10分から!南海放送ラジオで終活の大切さを楽しくお届けしています♪
今日もラジオで楽しく終活情報をお届け!!認知症対策としての家族信託についてお話しました😊
こういったラジオ番組の出演も、「家庭円満な社会を創る」という理念のもと活動しています。
よかったらドライブ中にでも聴いてください🚗
江刺伯洋のモーニングディライト④ RNB南海放送 2024/4/12(金) 10:10-11:08
https://radiko.jp/share/?t=20240412101947&sid=RNB #radiko
【年末年始の営業に関するお知らせ】
誠に勝手ながら、弊事務所は12月28日(水)から1月8日(日)まで、年末年始の休業期間とさせていただきます。
1月9日(月)より通常通り営業いたします。
本年も大変お世話になりました。どうぞ皆様も良いお休みをお過ごしいただき、新年が素晴らしいものでありますようにお祈り申し上げます。
「俺は誰もが幸せな相続ができるように安心を提供し、家庭円満な社会を創る」!!
法人登記のほったらかしにご注意を!【勝手に解散登記が入るかもしれません】
相続放棄をしても、受け取ることができる財産とは?
相続放棄をするかどうか考えている間にも、遺族の方は死亡にかかわる様々な手続きを求められます。その中でも、特にお金を支払う・受け取るという類の手続きには注意を要します。相続放棄をしても、受け取れる財産と受け取れない財産があるからです。
ポイントは、法律的に「もし本人が生きていれば、本人が受け取るはずのお金であったかどうか」です。これはイメージではなくて、法律的にそう規定されているかどうかがポイントになります。
本人が受け取るはずのものであったなら、遺産の中に含まれることになるため、その遺産を相続人が受け取ってしまうと相続を認めたことになります(単純承認)。つまり、相続放棄をするのなら、受け取ってはいけないものということになります。
しかし、次のお金は、遺産には含まれず、相続人の「固有の財産」とみなされるため、相続放棄をしても受け取ることができます。
a 生命保険金
生命保険金の受取人が指定されている場合に受け取れるのはもちろんですが、受取人が「法定相続人」と記載されていても、保険金は受取人固有の権利であるため、相続財産ではありません。よって、相続放棄をしても保険金を受け取ることができます。
ただし、生命保険の受取人が「被相続人」である場合は、その保険金は相続財産に組み込まれてしまうため、受け取ることができません。
b 死亡退職金
社内規定において「遺族に対して」死亡退職金を支給する旨の規定があれば、それはご遺族が「固有の権利」として受け取ることができます。よって、相続放棄をしても死亡退職金を受け取ることができます。
ただし、生命保険金と同じく、(ほとんどありませんが)社内規定で受取人が「被相続人」と規定されてしまっている場合は、その死亡退職金は相続財産に組み込まれてしまうことになりますので、受け取ることができません。
c 遺族年金
遺族年金は、遺族がその「固有の権利」に基づいて受給するもので、相続財産には含まれません。よって、相続放棄をした場合でも、遺族年金を受け取ることができます。
d 未支給年金
未支給年金とは、年金の受給者が死亡した場合に、その者に支給すべき年金であって、まだ支給されていないもののことをいいます。未支給年金は、自動的に振り込まれるものではなく、遺族から請求をすることによって支給されます。
例えば、老齢基礎年金の受給権者が7月20日に死亡した場合、その者が最後に受け取る年金は、6月15日に支給される4月分と5月分とになります。年金は、受給権者が死亡した月の分まで支給されるため、この場合であれば、6月分と7月分が未支給年金となります。つまり、年金は「後払い」なのです。
未支給年金は、普通に考えると本来は本人である被相続人の財産のような気がしますが、法律で「自己の名で」、その未支給の年金の支給を請求することができると定められているために、「固有の権利」として受け取ることができます。よって、相続放棄をした場合でも、未支給年金を受け取ることができます。
ただし、未支給年金を受け取るためには、次の2つの条件を満たす必要があります。
①年金を受けていた被相続人と「生計を同じくしていた」(※)こと
かつ
②配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の3親等内の親族からの請求があること
※「生計を同じくしていた」とは・・・厚生労働省の認定基準では、「住民票上同一であるとき」、「住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき」、「住所が住民票上異なっているが、現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を1つにしていると認められるとき」の3つの場合に分けて規定されています。実務上は、世帯全員の住民票等の添付書類、生計同一関係の申立書に基づいて認定を行ないます。
ちなみに、前記(2)の全員が請求できるわけではなく、順位があります。①配偶者 ②子 ③父母 ④孫 ⑤祖父母 ⑥兄弟姉妹 ⑦3親等内の親族の順位となります。
e 葬祭費・埋葬料
被相続人が国民健康保険に加入していた場合には葬祭費、健康保険に加入していた場合には埋葬料という名目で給付金が支給されます。葬祭費・埋葬料は「喪主」が「固有の権利」として給付金を受け取ることになりますので、相続放棄をした場合でも給付金を受け取ることができます。
f 高額医療費の還付金
高額医療費の還付金は、相続放棄をした場合に、受け取れる場合と受け取れない場合があります。ポイントは、高額医療費の還付金を受け取れるのは、世帯主又は健康保険の被保険者だけであるということです。(以下、世帯主又は健康保険の被保険者のことをまとめて「世帯主」といいます。)
亡くなった方が、世帯主ではないのであれば、世帯主は相続放棄をしても高額医療費の還付金を受け取ることができます。
逆に、亡くなった方が世帯主であれば、高額医療費の還付金は、世帯主の相続財産に組み込まれてしまうため、相続人が相続放棄をすると還付金は受け取ることはできなくなってしまいます。
g 団体信用生命保険
住宅ローンの債務者(被保険者)が死亡した場合に、保険会社から住宅ローンが完済される「団体信用生命保険」については、受取人が債権者(金融機関)であるため、そもそも住宅ローンの債務が相続人に引き継がれることはありません。よって、団体信用生命保険に加入している場合の住宅ローンについては、相続債務として考慮する必要がなく、相続放棄をしても遺族から申請の手続きをすることができます。
しかし、注意しなければならないのは、被相続人(亡くなった方)名義の住宅に同居していた相続人が相続放棄をする場合、その住宅も放棄しなければならないため、住み続けることができなくなります。団体信用生命保険加入の有無と、今後の住宅について総合的に考えて相続放棄を検討するようにしましょう。
その他、参考になりそうな相続放棄に関する判例を箇条書きにしておきます。判例はあくまで、争われた個別の事例において裁判所が判断した結果ですので、似たようなケースであっても、必ず同じ判決が出るわけではありません。相続放棄をしたら、被相続人の財産には手を付けないことに越したことはありませんので、これらは参考程度にご覧ください。
相続放棄が認められた事例(=相続財産の処分にあたらないとされた例)
・相続人が、価値がなくなるほどに使用された上着とズボン各1着を第3者にあげた場合でも、一般的経済価値があるものの処分にはあたらないため、相続放棄をすることができます。
・相続人が、ほとんど経済的な価値のない被相続人の身の回りの品及び僅かな所持金を引き取り、これに相続人の所持金を加えて遺族として当然なすべき火葬費用及び医療費残額の支払いにあてたことは、相続財産の処分に当たりません。
※この事例では、幸い相続放棄が認められましたが、相続放棄をしたいのであれば、僅かであっても被相続人の財産は使わずに分別管理することをオススメします。
・預金は解約してはいけませんが、預金を解約してしまった場合でも、預金を封筒などにいれ、他の現金とは分けて保管していれば相続放棄できる可能性があります。しかし、一部でも使い込んでしまった場合には相続放棄は認められません。いずれにしても、相続放棄をするのであれば、預金を解約せず、そのままの状態にしておくのがベストです。
相続放棄が認められなかった事例(=相続財産の処分にあたるとされた例)
以下の行為をすると、相続放棄はできません(もしくは無効になります)。
・預貯金・不動産・株式等の被相続人名義に関する財産について相続手続きをすると、原則として相続したことを認めたことになりますので、相続放棄はできません。
・資産価値のある物を売却したり、自分の物として使用したりすると相続放棄することができなくなります。相続放棄をするのであれば、高価な物の形見分けは受け取らない方が無難です。
・株式に基づく株主権の行使をすると、相続放棄ができなくなります。
つまり、被相続人が会社の社長かつ株主であったケースにおいて、安易に株主総会を開催して役員変更等行うと相続放棄ができなくなる可能性があります。
・相続財産である賃貸不動産の賃料の受取口座を、自分の口座に変更すると相続放棄ができなくなります。
・衣類でも、一般経済価値を有するものを他人に贈与したときは、相続放棄ができなくなります。
・スーツ・毛皮・コート・靴・絨毯等の遺品のすべてを自宅に持ち帰ると、相続放棄ができなくなります。
・相続財産の中からの支出で仏壇仏具・墓石の購入は、控えた方が無難です。
※ある裁判例では、社会的に見て不相当に高額でない仏壇・墓石の購入について、「相続財産の処分に当たるとは断定できない」と判断し、相続放棄を認めていますが、この裁判例だけで「仏壇・墓石の購入は大丈夫だ」と考えることは出来ません。上記の裁判のケースでは、支出した金額などを総合的に判断した結果、認められたのであって、仏壇・墓石等の購入が相続財産の処分に当たらないと一般的に考えることはできないのです。
・被相続人が支払うべき税金、借金、医療費等は、相続放棄をすれば支払う義務はありません。これらを被相続人の財産の中から支払ってしまうと、原則として相続放棄ができなくなります。
しかし、相続放棄をした人自身が元々持っていた財産(固有の財産)の中から支払った場合は、被相続人の相続財産について処分したことにあたらないため、相続放棄ができます。
同じ理由で、被相続人の死亡により受け取った生命保険金から、被相続人の債務を支払っても、相続放棄をすることができます。前述のとおり、生命保険金は受取人「固有の財産」であるため、被相続人の相続財産について処分したことにならないからです。
・被相続人が1人暮らしで亡くなったため、荷物の引取りを大家さんから要求されても、相続放棄をすれば、法的には応じる義務はありません。ただし、相続放棄をしたとはいっても、次順位の相続人の管理下に置かれるまでは、管理義務がありますので、大家さんに頼まれた場合は、荷物等を一定期間ご自宅で保管しておくのがよいでしょう。
・相続放棄をすれば、法律上初めから相続人ではなかったことになりますので、他の相続人から「手続きに必要だから」といって署名押印を求められても、応じてはいけません。署名押印に応じると相続放棄できなくなる可能性があります。
もし署名押印を求められた場合は、「家庭裁判所で相続放棄の手続き中である」旨を伝えて、相続放棄が完了するまで待ってもらうしかありません。相続放棄が完了した後に、相続放棄申述受理証明書を他の相続人に渡すことによって、ようやく署名押印を求められることはなくなります。このような対応は、債権者や役所等の関係各所に対しても同様です。
安易に「遺産はいらない」と実印を押すのは危険!知られざる借金のリスク
自営業の後継者以外の相続人は、相続放棄を検討すべき!
被相続人が生前に自営業者・会社役員であった場合に、もし後継者以外の相続人の方が何も相続しないのであれば、後継者以外の方は相続放棄を検討するべきです。
相続人が複数いる場合、借金の返済義務は法定相続分に応じて負担することになります。例えば、被相続人が連帯保証人になっていて相続人が子供3人である場合は、子供は連帯保証人として各3分の1ずつ負担することになります。
次のようなケースで大きなトラブルとなります。
甲株式会社(代表取締役A)は、銀行から事業を行なうため3億円の借り入れをしていました。甲株式会社の代表取締役であるAは、個人として連帯保証の契約をしています。(実際の銀行実務では、会社の連帯保証人として、社長個人がなっている場合がほとんどです。)
Aが死亡し、甲株式会社の後継者は、長男のBとなりました。Aの遺産は総額7000万円ありましたが、二男Cと長女Dは、それらの遺産は甲株式会社の事業に必要だろうということで、気持ちの100万円だけ相続し、その他すべての遺産はBが相続することになりました。その旨を記載した遺産分割協議書を作成し、B・C・Dは実印を押印しました。
そのまま事業が上手くいけば、何も事件は起きません。しかし、5年後、Bの経営手腕が発揮されず、甲株式会社の経営が破綻しました。
するとどうなるでしょうか?
借金の残額2億7,000万円は、甲株式会社に返済義務がありますが、会社が破綻し返済できないとなると、次は連帯保証人に請求が行きます。契約書上の連帯保証人はAですが、すでにAは死亡しているため、その連帯保証人としての地位は、相続人全員に平等に相続されます。
突然の銀行からの2億7,000万円(B・C・Dの各負担割合は9,000万円)の請求に、二男Cと長女Dは、顔面蒼白です。
CとDは次のように主張します。
「ちょっと待ってください!私たちは100万円しかもらっていないし、会社はBが継いだのだから、私たちは関係ありません!」
しかし、この主張は認められません。CとDが「関係ありません」と主張するためには、相続放棄をしなければならなかったのです。相続人として遺産分割協議に参加して、しかも100万円を受け取っている以上、もはや相続放棄はできません。最終的には、巨額の借金を返済することができず、B・C・Dは全員自己破産してしまいました。
ちなみに、仮にCとDが100万円を受け取っていなかったとしても、遺産分割協議をしている以上、原則として相続放棄は認められません。過去の裁判例では、遺産分割協議に参加して自分は遺産を一切もらわなかった相続人が、後になって多額の借金の存在を知って相続放棄しようとした事例があり、その事例では「遺産分割協議が要素の錯誤により無効なため、相続放棄できる」とした裁判例があります。しかし、これはあくまで1つの裁判例であって、遺産分割協議に参加して実印を押すこと自体が単純承認したと考えるのが原則ですので、原則通り相続放棄を認めないとする裁判例もあります。安易に「あとで借金が判明しても、それから相続放棄すればいい」と考えるのはリスクが大きいと言わざるを得ません。
この悲劇は相続について「知らなかった」ことが原因で起こっています。後継者であるBは、事業を行なう以上相続せざるを得なかったとしても、CとDはAが死亡してから速やかに家庭裁判所に相続放棄を行なうべきだったのです。
しかし、甲株式会社の経営に全くタッチしていないCとDは、甲株式会社が3億円もの借金をしていたことも、父Aが連帯保証人となっていることも知らなかったでしょう。自営業をしている方であれば、少なからず金融機関からの借り入れがあるものです。そして、借金をしているのが会社であったとしても、代表者個人で連帯保証していることがほとんどです。
後継者でない相続人は、経営状況を知らないからこそ相続放棄を検討するべきなのです。
後継者でない相続人が多くの遺産を相続することもありますので、その場合は相続放棄をするわけにはいきません。しかし、親にいくらの借金があって、誰の連帯保証人になっているか、家族全員が知っているわけではないため、このようなリスクが潜んでいるということは覚悟して相続しなければなりません。
先ほどの事例のように、CとDの相続がゼロというのも寂しいので、ハンコ代として「100万円ずつあげたい」ということもあると思います。そういうときは遺産分割をするのではなく、CとDは相続放棄を行ない、すべての遺産を後継者Bが相続してから、相続の手続き外でBからC・Dにそれぞれ100万円を贈与する方法がオススメです。
C・Dがそれぞれ100万円を相続する遺産分割をしてしまうと、借金や連帯保証人の地位についても相続してしまいます。
C・Dが相続放棄をし、相続手続き外でBから100万円の贈与を受けることによって、C・Dはリスクを取ることなく100万円を手にすることができます。
なお、この贈与の手続きは、相続とは別個の手続きであるため、贈与の基礎控除である110万円を超えると贈与税がかかります。このような手法を取られるときには、司法書士や税理士等の専門家にご相談の上で行なってください。
なお、当初から自分自身が連帯保証人になっている相続人については、その人自身が連帯保証人であるため、相続放棄をしたとしても、当然その返済を免れることはできません。よって、借金をする際には、相続人になる予定の人は、連帯保証人にならない方がいいといえます。そうすることによって、万が一のときには相続放棄することによって借金を回避することができるからです。
相続放棄をすると、その債務が次順位の相続人に承継されてしまう。
他にも相続放棄を行なう上で注意しなければならないことがあります。それは、相続放棄をすると「第2順位・第3順位の相続人に、借金や連帯保証人の地位が移る」ということです。
次の図では、はじめに相続人であった配偶者と長女が相続放棄をするによって、第3順位である兄と姉に相続権が移ることになります。(第2順位の両親が死亡しているため、第3順位の兄と姉が相続人になります)
先順位の相続人が相続放棄した事実は、家庭裁判所から通知や連絡がされることはありません。被相続人に借金があれば、兄と姉が借金を引き継ぐことになるため、第1順位の相続人が相続放棄をするのであれば、前もって第2・第3順位の相続人に相続放棄を検討すべきことを知らせておきましょう。法的に知らせる義務はありませんが、良好な人間関係を続けるためにもあらかじめ連絡しておくことが重要といえます。
兄弟姉妹も全員相続放棄してしまったらどうなる?
配偶者、子、両親、兄弟姉妹の全員が相続放棄をしたら一体どうなるでしょうか?
答えは、「国の物」となります。正確には、「国庫に帰属する」といいます。国の物となるのであれば、相続放棄をした人はもう関係がないかといえば、実はそんなことはありません。
相続放棄をした人は、財産を現に占有しているときは、(※)次順位の相続人が保存を始めるまでは保存を継続しなければなりませんので、「相続放棄をしたから私には関係がない」ということはできません。では、次々と相続人が相続放棄をした場合に、最後に相続放棄をした人は、次は誰にバトンタッチすればよいでしょうか。
(※「現に占有」とは「事実上、支配や管理をしている」状態のことです。たとえば、被相続人の自宅に、被相続人と同居していた相続人は、自宅を「現に占有」していたと言えるため、相続放棄後も保存しなければなりませんが、相続人は都会で住み、被相続人(親)は田舎で住んでいた場合はついては相続放棄すれば、親が暮らしていた実家の保存義務はありません。)
最後に相続放棄した人は、裁判所に「相続財産清算人」の選任を申立てして、相続財産清算人にバトンタッチしなければ、保存義務を免れることはできません。この相続財産清算人は何をするかというと、遺産を保存し、最終的には国に引き渡す業務を行ないます。
すべての遺産がお金であれば、国に引き渡して業務終了となりますが、現実にはそんな簡単な業務はほとんどありません。不動産や有価証券がある場合には、そのままでは国も引き取ってはくれませんので、できる限り売却等を行なって、現金という形で国への引き渡しを行なうことになります。
しかし、実際の実務においては、この相続財産清算人の手続きまで進むことはそれほど多くはありません。誰が相続財産清算人の選任を望むのかといえば、債権者等の利害関係のある方ですが、そのような方はお金になりそうな遺産がある場合だけ申立てを行なうことが多いからです。したがって、目立った遺産がない場合は、相続人が自主的に家庭裁判所に対して相続財産清算人の選任申立てをしない限り、選任されることはほぼありません。
遺産の中に不動産がある場合は要注意です。
例えば、建物が空き家になり、そのまま老朽化し、屋根が落ちて通行人がケガをしてしまったり、また、倒壊して隣の家に倒れてしまったりした場合は、相続放棄をしたとしても管理責任が残っている以上は損害賠償請求を受けることになるでしょう。このように相続放棄をしたからといって完全に安心はできないのです。ただし、責任が発生するのは相続発生時にその不動産を占有(例えば、同居)している状態の場合に限ります。
それなら早々に相続財産清算人を選任すればよいと思いませんか?
しかし、相続財産清算人を選任する上で問題になるのが費用の問題です。相続財産生産は弁護士や司法書士等の専門家がなることが一般的ですが、専門家もタダで業務を行なうわけにはいけません。もちろん報酬が発生します。報酬は相続財産から支払われることになりますが、足りない場合には申立人が支払うことになるのです。