Archive for the ‘備忘録’ Category
【抵当権抹消】取扱店変更がある場合は変更証明書が必要か? 〜業務権限証明書ありのケース〜
いつものように抵当権抹消登記のご依頼を受けたところ、
【登記上】
甲銀行(取扱店 A支店)
とあるのですが、出てきた書類は…
【書類上】
甲銀行 B支店の支店長に対する業務権限証明書
甲銀行 B支店の支店長作成の解除証書
でした。
ムムム・・・!!
まっ、大丈夫だろ!うん。
・・・大丈夫だよな?
と不安になったので、一応確認してみました(笑)
論点としては、取扱店の変更があった場合に「変更証明書」が必要かどうか?という話です。
法定添付書面ではないから、いらないはずと思い、法務局に確認したところ、
やはり
「規定がないので現状変更証明書は求めていません」とのことであるが、「今現状は求めていないだけで、他の支局又は今後の取り扱いまでは保証できません」とのことでした。
この言い回しは、公務員である以上仕方のないことだと思いますので、結局「いらない」ということですね!!
ホッと安心して、申請することができました☺
たかが抹消ですが、されど抹消です。簡単そうに見えて、侮れないときが多々あります。気を引き締めて手続きしなければいけませんね!(^^)/
地役権設定は利益相反行為になり得るか?
今回は久しぶりに実務の備忘録を書きたいと思います。
承役地の一部についての通行地役権設定登記手続きのご依頼がありました。
承役地の一部について、地役権設定する際に気を付けなければならないのは、地役権図面を添付することですね!登記原因証明情報としては、地役権設定契約書に地役権図面を合綴し契印したものを添付しました。
【申請情報】
登記の目的 地役権設定
原因 平成◯◯年◯◯月◯◯日設定
目的 通行
範囲 北側◯◯・◯◯平方メートル
権利者 A
義務者 甲株式会社
代表取締役A
添付情報
登記原因証明情報 登記済証 印鑑証明書 株主総会議事録
地役権図面 代理権限証書 会社法人等番号
不動産の表示
1.承役地 〇〇の土地
2・要役地 〇〇の土地
申請書について、1点だけ法務局から「不動産の表示は、承役地を先に記載してください」とのお願いがありました。実際は私は要役地を先に記載したのですが、次回からはそのようにしてくださいとのことでした。(お願いレベルの話なので、補正にはなりません)
これはおそらく、「申請地は承役地」であって、要役地は職権によって登記されるため、申請地である承役地を先に書いてほしいということだと思います。
※個人的な見解です。
申請書を見れば、するどい方はお気づきかと思いますが、利益相反になっています。
地役権設定で利益相反なんて、かなりのレアケース!!
私は最初に「あ、これ利益相反だなー」と思って議事録を作成したのですが、念のため調べてみようと思って実務書をあさってみても、地役権の利益相反に関しての記述がどこにもありませんでした。ネット上で探しても専門家の記事は見当たらず…。普通なんらかの記述はヒットするんだけどな~。
地役権は、土地につく権利であって、人につく権利ではないので、例外的に権利者の氏名が登記されません。その関係で、もしかして地役権に関しては利益相反にならないのかな?なんて、ふと疑問がわきました。
しかし、登記論を一旦離れて法律論だけで考えると、会社所有の土地上に当会社の代表取締役が個人として通行しようとしてるんだから、実質1人で恣意的な契約ができてしまう。
「こりゃ絶対利益相反だ!!」
と自分では結論を出したのですが、
心配なので法務局と打ち合わせしてみました。法務局も即答できず、ちょっと局内で検討させてくださいとのこと。
結果、やっぱり利益相反なので、議事録添付必要でした。
どんな登記であろうが、専門書に記載がなかろうが、原則に立ち返って考えなければならないですね!久しぶりにワクワクした登記でした☺
珍しい登記シリーズ「賃借権設定登記、さらに賃借権質権設定登記」
またもや来ました、珍しい登記を経験しましたので書き残しておきたいと思います。今回の手続きを忘れているであろう10年後の自分のために…(笑)
司法書士業界には約10年おりますが、開業してから珍しい手続きを多くさせていただいております。不動産取引、住宅ローンや贈与手続きなどのよくある手続きはもちろん慣れておりますが、今回のような珍しい手続きをさせていただくことで専門家として深みがでるってもんですね(^^♪
難解な手続きどんと来い!!
今回の手続きは「賃借権設定登記」と「賃借権質権設定登記」でした。
賃借権設定登記はたまにあります。例えば、事業用借地権(コンビニやガソリンスタンドが土地を借りるなど)のときなど登記することもありますが、賃借権を目的として質権設定を行うのはちょっと珍しいですね。
※抵当権は物権(所有権、地上権、永小作権)にしか設定することができませんが、質権は債権(指名債権や賃借権)にも設定することができるのです。
今回はなぜこんなことをする必要があったかというと、土地の所有者から事業者が土地を借りて太陽光パネルを設置し、その事業者が借りている権利を銀行が担保を取って融資をしたのです。
登記原因証明情報の概要は以下の通りです。
1 登記申請情報の要項
(1)登記の目的 1番賃借権質権設定
(2)登記の原因 平成〇年〇月〇日金銭消費貸借
平成〇年〇月〇日設定
(3)当 事 者 権利者(甲) (本店)
(商号)A
(代表取締役)
義務者(乙) (住所)
(氏名)B
(4)不動産の表示
〈省略〉
2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)平成〇年〇月〇日、甲と乙は、下記内容の金銭消費貸借契約を締結し、同日、甲は乙に対し、本契約に基づく金銭を貸し渡した。
債権額 金〇〇万円
損害金 年〇〇%(年365日の日割計算)
債務者 B
(2)平成〇年〇月〇日、甲と乙は、上記記載の債権を被担保債権として、下記賃借権質権設定契約を締結し、本件土地賃借権(平成〇年〇月〇日法務局受付第〇〇号登記済み)の上に第1順位の使用収益禁止特約付の質権を設定した。
(3)本件不動産の所有者であるZは、本件土地賃借権(平成〇年〇月〇日法務局受付第号登記済み)への賃借権質権設定を異議なく承諾した。
質権の表示
〈省略〉
まず、一つのポイントとして、原則として質権の成立要件に「引き渡し」がありますので、登記の原因となる事実又は法律行為の要件として引き渡しの旨を記載すべきではないか?との疑問がありますが、今回は使用収益禁止の特約があるため、そもそも引き渡しが必要ありませんでした。
法務局の方からも「引き渡し」について言及がありましたが、結局引き渡しがなくても質権は成立しているということで通りました。使用収益をしないのであるから、そもそも引き渡しをする必要がなく、諾成契約になるということですね。
所有者の承諾書(印鑑証明書付き)を添付したことと、登録免許税は質権の債権額×1000分の4だということくらいでしょうか。
所有権に設定する質権とは違い、賃借権質権は付記で登記されるので「うーん、1,000円かな?」とも悩みましたが、通常どおり債権額×1000分の4でした。
登記完了後の全部事項証明書はこんな感じです
(※案件によってケースバイケースですので、ブログ記事に関するご質問には回答しかねます。参考にされる場合は、自己責任お願いします。)
実務書にも載っていないような登記ですが、そんなマイナーな登記も軽々こなすのがプロってもんですよね☺これからも精進します!!
環境衛生金融公庫の抹消登記手続き
先日、収用を行う予定の土地3筆に環境衛生金融公庫名義の抵当権が3つずつ設定されていたので、抵当権抹消登記のご依頼がありました。
「たかが抹消、されど抹消」です。住宅ローンの抹消のような簡単なものもありますが、放置されているものはそれなりに難しいものもあるのです。
少々珍しい登記だったため、今回も自身の備忘録としてブログを書かせていただきます。
【登記記録】
A土地 1番抵当権 環境衛生金融公庫
2番抵当権 環境衛生金融公庫
3番抵当権 環境衛生金融公庫
B土地 1番抵当権 環境衛生金融公庫
2番抵当権 環境衛生金融公庫
3番抵当権 環境衛生金融公庫
C土地 1番抵当権 環境衛生金融公庫
2番抵当権 環境衛生金融公庫
3番抵当権 環境衛生金融公庫
まず、これらの登記を何件の登記申請を行うことができるか?ですが、1件で申請することができます。
細かい条文の説明は割愛しますが、同一の土地上に同一名義人が複数の抵当権を抹消する場合は一括して申請することができるのです。
なぜ一括申請するのかというと、抹消登記は1不動産につき1,000円の登録免許税がかかるため、一括申請をした方が安上がりとなり、お客様のメリットになるからです。
つまり、今回は3筆の不動産があるので3,000円で済みます。これを共同抵当権ごとにばらばらに抹消すると9,000円かかってしまうのです。
さて、本題ですが、環境衛生金融公庫は現在存在しません。環境衛生金融公庫が辿った経緯は以下の通りです。
環境衛生金融公庫
↓
平成11年10月1日 国民生活金融公庫に承継
↓
平成20年10月1日 株式会社日本政策金融公庫に承継
移転登記がなされていればなんの問題もないのですが、今回は環境衛生金融公庫の名義のままでした。
さらに、平成11年10月1日以前にすでに解除済みで、かつ、原契約書などの登記済証はすべて紛失しているとのことでした。
よって、株式会社日本政策金融公庫が抹消登記義務を承継していますので、移転登記を経ることなく直接事前通知制度を利用して抹消することとしました。
申請内容は以下の通り
登記の目的 抵当権抹消
原因 平成11年9月30日解除
抹消すべき登記 (省略)
権利者 (所有者の表示)
義務者 環境衛生金融公庫
上記承継会社 株式会社日本政策金融公庫
代表取締役 (省略)
登記識別情報を提供できない理由:その他(紛失)
添付書類
登記原因証明情報(甲銀行の某支店長押印の解除証書)
代理権限証明情報(当事者の委任状及び日本政策金融公庫から甲銀行への包括委任状)
会社法人番号(省略)
業務権限証明書(甲銀行から某支店の支店長への業務権限証明書)
印鑑証明書(日本政策金融公庫の印鑑証明書)
※事前通知のため必要。
※甲銀行の印鑑証明書は不要。
承継証明書(平成11年10月1日国民生活金融公庫法附則第3条第1項及び平成20年10月1日株式会社日本政策金融公庫法附則第15条第1項による承継により添付省略)
以下省略
このような申請書となりました。
かなり騒がしい申請書ですね(笑)
承継が2段階になっていますし、包括委任状と業務権限証書によって「代理の代理の代理」のような形での申請ですので、ちょっと珍しかったです。
通常の会社の場合は、承継前に会社の商号や本店に変更がないか証明しなければならないため、閉鎖謄本を添付しなければなりません(相続登記の際の戸籍の附票を添付するのと同じ理屈)が、今回は元国の機関の承継ということで官報にも記載があり公知の事実のような意味合いで添付が不要とのことでした。
検討事項の多い抹消登記でしたので、今後のために書き残しておきます。
(※案件によってケースバイケースですので、ブログ記事に関するご質問には回答しかねます。参考にされる場合は、自己責任お願いします。)
読んでいただいた方、ありがとうございました!(^^)!
代表取締役が2人(共同代表)の会社とは?!
株式会社の共同代表に関するお仕事がありましたので、備忘録として書かせていただきます。
※少し専門的なお話になります。
先日、ある会社の社長様から代表取締役を1人から2人にしたいとのご相談があり、詳しくお伺いしたところ「単に代表取締役を2人にするだけでなく、それぞれ別の会社実印を持ちたい。」とのことでした。
「もちろん可能です!」
そこまでは、通常の相談の回答だったのですが、顧問税理士の先生からさらに次のような質問がありました。
「共同代表となっても、何かしら契約するときに代表2人の印鑑がいらないように(1人だけの印鑑ですべて事が済むように)手続きしてほしい。」
一瞬「?」となりました。なぜなら、元々代表取締役として選定されている方は、それぞれ会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする包括的な権限を持つからです。
もっと詳しく言うと、対内的のみならず対外的にも代表取締役の権限の範囲を制限・限定することはできますが、対外的な関係において、その事情を知らない相手に対しては代表取締役が業務執行権に制限があったことを主張できないのです。
要は、そのような手続きがなくとも当然に1人で何もかも手続きできるので「?」となったわけであります。
その旨を税理士の先生にお伝えすると、「いや、1人でできるように手続きが必要だったはずだけどなあ」とのこと。
とりあえず、少なくとも現在の法律ではそのような取り扱いはなく、2人の印鑑が必要な場面はないとお伝えして、帰って少し調べてみました。
調べてみると、2005年までは「共同してのみ代表権を行使することができる旨」を定めることができたそうです。「何か契約する際には必ず2人の印鑑が必要」という定めができたわけですね(^^)
おそらく、この制度が頭の片隅に残っていて少し誤解されていたのかなと思われます。
(※ほとんど利用されることがなかったため、今は廃止されています)
つまり、何も定めなかった場合には、昔も今も同じようにそれぞれ代表権を持つということなので、今回はどちらにしてもお客様のご希望通りそれぞれ代表権を行使できるので問題なさそうです☺
相続人ではない包括受遺者間の遺産分割
先日ちょっとレアな登記を経験しましたので、備忘録として記載させていただきます。専門的な記述になります。
事例 ※実際の事例よりかなり簡易に書きます
登記名義人 A(昭和60年死亡)
Aの相続人B(平成29年死亡)
Bの相続人C
上記の状態で、亡Aの相続については、昭和60年当時の遺産分割協議書があり、協議の結果Bが当該不動産(農地)を取得するという内容でした(当時、なぜか一部の不動産についてのみ相続登記をしており、一部登記していないものがあった)。
その上で、Bが相続人ではないD・E・F・Gに対して4分の1ずつ包括遺贈するという公正証書遺言を遺していたのです。
なお、遺言執行者はEと指定されています。
D・E・F・Gの希望としては、D一人の名義にしたいという希望があります。
・・・さて、論点が盛りだくさんです(笑)
私が思い当たる論点は以下の通り。
①包括遺贈の場合、農地法の許可の要否。
②亡A名義→亡B名義への相続人による登記を行う際、保存行為として申請者となるのは、Bの相続人であるC?それとも包括受遺者?
③そもそも全員相続人でない包括受遺者間での遺産分割は可能か。
④遺産分割が可能として、亡B→Dにショートカットして登記できるか。それとも一度D・E・F・G名義を経由しなければならないか。
⑤包括遺贈による所有権移転登記の登録免許税は?
⑥遺産分割による持分移転登記の登録免許税は?
1つずついきます。
①は、受験時代に覚えていたので、包括遺贈の際は許可不要と覚えていたのでクリアしました。また、それを前提とする年月日遺産分割を原因とする持分移転も当然許可不要です。
②については迷いましたが、実際の申請は相続人であるCからしました。実際それで登記は通りましたが、法務局から電話があって、「包括受遺者からの申請が適切ではないですか?」とのご指摘がありました。協議の結果、まあ保存行為としてどちらの申請でもOKだろうということで決着がつきました。
③は、相続人と同一の地位で遺産分割に参加できるのは明白ですので、もちろん可能ですね。ただ、全員相続人ではな包括受遺者間での協議ということで「んー?」と一瞬なりました。
④については、登記研究でショートカットできないという記載がありました。以下の通り。
複数の包括受遺者間において遺産分割が成立した場合でも、遺産共有状態の登記を経由した上で、目的不動産の取得者に対する持分移転登記をしなければならない(登記研究571号75頁)。他方、一部包括受遺者と相続人との間において遺産分割が成立した場合に遺産共有状態の登記を省略できるかについては明らかでないが、受遺者と相続人との共有状態を登記する場合には、先に遺贈による一部移転を、その後に相続による残部の移転を申請しなければならない(昭和30年10月15日民甲第2216号)。
⑤については、1000分の20とすぐにわかったのですが、⑥の遺産分割の際には、1000分の20と1000分の4どっちだ?!となりましたが、相続人以外ということで、⑥も1000分の20のようです。
以上、論点盛りだくさんの司法書士冥利につきる登記がありました。
(※案件によってケースバイケースですので、ブログ記事に関するご質問には回答しかねます。参考にされる場合は、自己責任お願いします。)
今後また出てきたら一瞬で判断できるのでパワーアップできました(^^♪でも、もう一生会えない事例かも?!笑
船の登記?!
先日、ある金融機関様から「船と土地を共同担保に取りたいので、見積もりお願いします。」とお電話がありました。
「ふ、船!?」
船舶登記の存在はもちろん知ってはいましたが、実務で取り扱うのはレアなのでちょっと調べてみました。
基本的には、不動産(土地や建物)と取り扱い・申請方法が同じですが、以下の3点が特に注意です。
※登記官との打ち合わせ内容です。
①オンライン申請には対応していない可能性があるので、書面申請で行うこと(おそらくできないことはないが、業務用ソフトが対応していない可能性あり)。
②船舶登記は個別に受付番号が振られるので、不動産登記との一括申請はできない。
③抵当権であれば、共同担保として1,500円で追加設定することができるが、根抵当権の場合は減税が効かないため船舶登記と不動産登記で2度にわけて債権額の1000分の4を支払わなければならない。
※累積式共同根抵当権と考えるそうです。
見積もり段階では、③はかなり注意ですね。
1億の融資であれば、40万円+1,500円の登録免許税で済むところを80万円かかるわけですから、相当違ってきますね。
次回から即答でお見積りできるので、レベルアップできました(^^♪
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