過去に当事務所が組成に関与した家族信託の案件がありまして、この度信託終了事由(死亡)の発生により信託終了に伴う所有権移転及び信託登記抹消登記を行いました。それほど頻繫にあるものではないので、自身の備忘録としてブログ記事にします。
組成した信託は以下のような形でした。※ABCは直系血族です。
委託者兼受益者 A(祖母)
受託者 B(母)
信託終了事由 Aの死亡【※その他の事由は省略】
帰属権利者 C(子)
※本件信託に係る委託者の地位及び権利は、相続により承継せず、受益者の地位と共に移動するものとする旨の定めあり。
Aが死亡したため、以下3件の登記を申請しました。
①受益者変更登記「A→Cへの変更」
②委託者変更登記「A→Cへの変更」
③所有権移転及び信託登記抹消「B→Cへの所有権移転」
いきなり③の所有権移転及び信託登記抹消をしたいところですが、信託終了事由の発生後に時間的間隔がなく信託が消滅するのではなく、会社の清算と同じように、信託も清算の期間(信託法175 条(清算の開始原因))があって、清算が終わったら消滅するので、その間の沿革を登記上に表現するために①②が入ります。
実際に使用した申請書と登記原因証明情報は以下のとおりです。
(※信託契約の内容により行う登記はケースバイケースであり、さらに、登記官の判断により行うべき登記は異なりますので、ブログ記事に関するご質問には回答しかねます。参考にされる場合は、自己責任お願いします。)
①受益者変更登記「A→Cへの変更」の申請書、登記原因証明情報兼信託目録に記録すべき情報
【申請書】
登記の目的 受益者変更
原因 令和年月日死亡
変更後の事項 受益者 C
申請人 (受託者)B
添付情報 登記原因証明情報兼信託目録に記録すべき情報 代理権限証書
令和年月日申請 ○○法務局 御中
登録免許税 1物件につき1,000円
不動産の表示(省略)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【登記原因証明情報兼信託目録に記録すべき情報】
令和年月日
〇〇法務局 御中
1 登記申請情報の要項(信託目録に記録すべき情報)
(1)登記の目的 受益者変更
(2)登記の原因 令和年月日死亡
(3)変更後の事項 受益者 C
(4)申 請 人 (受託者)B
(5)不動産の表示 省略
2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)信託契約の締結
受託者 B(以下「甲」という)と委託者 A(以下「乙」という)は、令和年月日、受益者を乙とする不動産管理処分信託契約を締結し、登記を経由した(令和年月日受付第号)。
(2)受益者乙の死亡
令和年月日、受益者乙が死亡した。
(3)不動産管理処分信託契約において、信託終了事由として「乙の死亡」の定め及びC(以下「丙」という)を帰属権利者とする定めがある。
(4)信託法の定め
信託法第183条第6項において、帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす旨の定めがある。
(5)受益権の移転
よって、本件受益権は、令和年月日、乙から丙に移転した。
上記の登記原因のとおり相違ありません。
(新受益権者) C ㊞
(受託者) B ㊞
②委託者変更登記「A→Cへの変更」の申請書、登記原因証明情報兼信託目録に記録すべき情報
【申請書】
登記の目的 委託者変更
原因 令和年月日変更
変更後の事項 委託者 C
申請人 (受託者)B
添付情報 登記原因証明情報兼信託目録に記録すべき情報 代理権限証書
令和年月日申請 松山地方法務局 御中
登録免許税 1物件につき1,000円
不動産の表示(省略)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【登記原因証明情報兼信託目録に記録すべき情報】
令和年月日
〇〇法務局 御中
1 登記申請情報の要項(信託目録に記録すべき情報)
(1)登記の目的 委託者変更
(2)登記の原因 令和年月日変更
(3)変更後の事項 委託者 C
(4)当 事 者 受託者 B
(5)不動産の表示(省略)
2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)信託契約の締結
B(受託者)と(委託者・当初受益者 A(以下「乙」という))は、本件不動産について、不動産管理処分信託契約を締結し、令和年月日受付第号でその登記を経由した。
(2)受益者乙の死亡
令和年月日、受益者乙が死亡した。
(3)不動産管理処分信託契約において、信託終了事由として「乙の死亡」の定め及びC(以下「丙」という)を帰属権利者とする定めがある。
(4)信託法の定め
信託法第183条第6項において、帰属権利者は、信託の清算中は、受益者とみなす旨の定めがある。
(5)受益権の移転
よって、本件受益権は、令和年月日、乙から丙に移転した。
(6)委任者の地位の移転
ところで、本件不動産管理処分信託契約の信託条項には、「本信託に係る委託者の地位及び権利は、相続により承継せず、受益者の地位と共に移動するものとする。」旨の条項があることから、令和年月日、当該信託条項によって、委託者の地位は乙から丙に移った。
上記の登記原因のとおり相違ありません。
(新委託者)C ㊞
(受託者) B ㊞
③所有権移転及び信託登記抹消「B→Cへの所有権移転」の申請書、登記原因証明情報
【申請書】
登記の目的 所有権移転及び信託登記抹消
原因 所有権移転 令和年月日信託財産引継
信託登記抹消 信託財産引継
権利者 C
義務者 (信託登記申請人)B
添付情報 登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書 住所証明書 代理権限証明書
令和年月日申請 〇〇法務局 御中
課税価格 金万円
登録免許税 移転分 金円(権利者が相続人以外であったため1,000分の20)
信託登記抹消分 金円(1物件につき1,000円)
不動産の表示(省略)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【登記原因証明情報】
令和年月日
〇〇法務局 御中
1 登記申請情報の要項
(1)登記の目的 所有権移転及び信託登記抹消
(2)登記の原因 所有権移転 令和年月日信託財産引継
信託登記抹消 信託財産引継
(3)当 事 者 権利者(受益者)C
義務者(受託者)B
(4)不動産及び信託目録の表示(省略)
2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)B(受託者)(以下「乙」という)とA(当初委託者・当初受益者)は、本件不動産について、不動産管理処分信託契約を締結し、令和年月日受付第号でその登記を経由した。
(2)本件不動産管理処分信託契約において、信託終了事由として「Aの死亡」の定め及びC(以下「甲」という)を帰属権利者とする定めがある。
(3)令和年月日、Aが死亡した。
(4)よって、本件不動産の所有権は、信託契約の規定に基づき、受託者たる乙から甲へ令和年月日信託財産引継を原因として移転した。
上記の登記原因のとおり相違ありません。
(権利者)C ㊞
(義務者)B ㊞
――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上の内容で無事登記完了しました。
ちなみに、登記原因証明情報の押印はいずれの登記もBのみでよいと考えますが、Cにも複雑な法律関係を確認してほしかったので、意思確認の意味も込めてBC双方に押印をいただきました。
本件登記対象の物件は収益物件であったため、登記完了後に、①今後はCの口座に入金するように賃借人にお願いすること。②A死後の家賃収入は、Cが確定申告しなければならないこと。③火災保険も名義もCに変更すること。の3点アドバイスさせていただきました。
そのほかにも、信託は司法書士としてアドバイスすべき点はたくさんありますね。神経すり減らす仕事ですが、やりがいもある仕事でした!ありがとうございました!!
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