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親権者(法定代理人)と未成年者が共有している不動産を、親権者だけで売却できるか?
親権者(法定代理人)と未成年者が共有している不動産を、親権者だけで売却できるか?
結論からいうと、可能です。
先日の不動産取引で以下のような登記がありました。
【甲不動産の所有者】
父 8分の6
子A 8分の1
子B 8分の1
この甲不動産を買主Xに売却する案件でした。なお、AとBは未成年者です。なぜ未成年者が共有者になっているかというと、元々父母で共有だったのですが、母は他界してしまったため、相続により、未成年者との共有状態となってしまったのです。
父が子Aと子Bの共有持分についてまで、勝手に売却してもよいのか?とちょっと疑問がわきそうですが、可能です。通常では、父母の共同親権者により売却することになるので、子Aと子Bの持分売却には父母双方で行う必要がありますが、本案件では母が他界されているため、父の単独親権です。よって、父のみで手続きすることになります。
利益相反のようにも感じる方もおられるかもしれませんが、利益相反には該当しません。以下の先例等があります。
【先例】昭23・11・5民甲2135(未成年者と親権者の持分を同時に売却)
〔照会〕親権者が未成年者と共有の不動産を自己の持分と共に未成年者に代わって、その持分を同時に売却する行為は民法第826条第1項に所謂利益相反の行為に該当するでしょうか。
〔回答〕利益相反の行為に該当しない。
【登先317・77】
親権者と複数の未成年の子と共有の不動産を、自己の持分と共に未成年の子に代わってその持分を同時に売却する行為は、利益相反行為に該当しないので、2人目以下の子について特別代理人を選任する必要はない。
売買契約書の売主署名欄は、例えば次のような記載となります。
「共有者 父の氏名、共有者 子Aの法定代理人 及び 共有者 子Bの法定代理人 (父の氏名)㊞」
※母が健在の場合は、母も法定代理人として署名押印が必要となります。
登記原因証明情報は次のように記載しました。無事、登記も問題なく完了しました。
(※参考程度にお願いします。本記事を参考にしても当事務所は一切の責任を負いません。)
「登記原因証明情報」
令和○年○月○日
○○法務局 御中
1 登記申請情報の要項
(1)登記の目的 共有者全員持分全部移転
(2)登記の原因 令和○年○月○日売買
(3)当 事 者 権利者 X
義務者 父、子A、子B
(4)不動産の表示 (省略)
2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)子A及び子Bは未成年者であり、父は子A及び子Bの法定代理人である。
(2)令和○年○月○日、買主Xと売主父、子A及び子Bの法定代理人父は、本件不動産につき、売買契約を締結した。
(3)上記売買契約には、所有権は売買代金全額を支払ったときに移転するという特約が定められている。
(4)上記売買契約に基づき、買主Xは売主父に対して、令和○年○月○日に売買代金全額を支払った。父は子A及び子Bの法定代理人として、子A及び子Bの売買代金もあわせて受領した。
(5)よって、同日、父、子A、子BからXに本件不動産の所有権が移転した。
上記の登記原因のとおり相違ありません。
共有者 父、共有者 子Aの法定代理人 及び 共有者 子Bの法定代理人
(住所) 父の住所
(氏名) 父の氏名 ㊞
法律を勉強された方であれば当然のことですが、初めての方はなかなかわからないこともあろうかと思います。当事務所においても、未成年者の不動産売却はそうそうあるものではありませんので、記事にしてみました☺
【家族信託】受託者が信託の本旨に従い信託財産を処分した場合の登記、そして決済 ~所有権移転及び信託登記抹消~
過去に当事務所が組成に関与した家族信託の案件がありまして、今年に入ってさっそく受託者の信託契約に基づく第三者への売却が成立しました☺
受託者から第三者への売買及び信託登記抹消の登記原因証明情報を作成したのですが、そう頻繁にある登記ではありませんので、備忘録として残しておこうと思います。
(※信託不動産の処分は信託契約によりケースバイケースですので、ブログ記事に関するご質問には回答しかねます。参考にされる場合は、自己責任お願いします。)
登記原因証明情報
〇〇地方法務局 御中
1 登記申請情報の要項
(1)登記の目的 所有権移転及び信託登記抹消
(2)登記の原因 令和 年 月 日売買
信託登記抹消 信託財産の処分
(3)当 事 者 権利者 甲
義務者 乙
(4)不動産の表示及び信託目録の表示
後記のとおり
2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)乙は、令和 年 月 日付で委託者Aと乙との間で締結された信託契約(以下、「本信託契約」という)に基づく信託受託者である。
(2)乙は、本信託契約の本旨に従い、令和 年 月 日、甲に対し本件不動産を売却する契約を締結した。
(3)上記売買契約には、所有権は売買代金全額を支払ったときに移転するという特約が定められている。
(4)上記売買契約に基づき、甲は乙に対して、令和 年 月 日に売買代金全額を支払った。
(5) よって、同日、乙から甲に本件不動産の所有権が移転し、本件不動産の信託は終了した。
不動産の表示 ≪省略≫
信託目録の表示 ≪省略≫
上記の登記原因のとおり相違ありません。
(売主)(住所)
(氏名) ㊞
以上の登記原因証明情報で登記完了しました。
ちなみに、売買代金は受託者乙が受領しますが、あくまでも売買代金は信託財産に属するため、課税上は受益者(この案件の場合は委託者兼受益者であるA)の収益となります。よって、譲渡所得税などは受益者Aに課税されることに注意を要します。
司法書士としてアドバイスすべき点はたくさんありますが、その中でも取引の際に受託者乙に対して、以下の点は最低でもお伝えすべき事項かと思います。
①売買代金の振込先は分別管理している信託口口座に振り込んでもらうこと。
(誤って受託者乙が個人的に使用している口座に振り込まないこと)
②譲渡所得がある場合は、受益者Aについて税務申告が必要であること。
清算結了済みの会社名義不動産が残っていた場合の所有権移転登記 ~清算人と利益相反行為~
先日、「清算結了登記済みの会社名義の不動産が残ってしまっているので、実体に合わせるための所有権移転登記をお願いしたい」とのご依頼がありました。今回ご依頼いただいた案件は利益相反行為にも該当する案件であったため個人的な備忘録として残しておきます。
清算結了登記済みのケースでは、以下の3パターンのどれかの方法で手続きを進めることが考えられます。
①会社を復活(清算結了登記の抹消)して、手続きを行なう
②会社は復活(清算結了登記の抹消)せずに、裁判所にスポット清算人に選任してもらって手続きを行なう
③会社は復活(清算結了登記の抹消)せず、また、裁判所にスポット清算人も選任せずに、当時の清算人が手続きを行なう
(※案件によってケースバイケースですので、ブログ記事に関するご質問には回答しかねます。参考にされる場合は、自己責任お願いします。)
今回は清算結了前にすでに売却済み(実体上の残余財産はなく、登記義務だけが残っている状態)であり、清算結了当時の清算人の方がお元気でしたので、③で行なうことにしました。
案件によりケースバイケースですが、
登記義務が残っているだけでなくて、実体上残余財産が残っていたのなら①を選択すべきといえます。
また、実体上の残余財産が残っておらず登記義務だけが残っている場合において、さらに清算結了当時の清算人が全員死亡してる場合には、②を選択することになるでしょう。
今回の③のケースは、以下の登記研究や先例によって、清算人個人の実印(市町村長発行の個人の印鑑証明書添付)で登記手続きが可能です。
参考文献 登記研究480(P132)
【六九一三】清算結了の登記後の登記申請手続
〔要旨〕株式会社の清算結了の登記前に売却によって所有権が移転した不動産を、清算結了の登記後、元清算人から、登記義務者たる清算会社を代表して清算結了の登記前の日付を登記原因日付として所有権移転の登記申請をすることができる。なお、申請書に添付すべき印鑑証明書は、市町村長の証明した元清算人個人の印鑑証明書で足りる。
〔問〕株式会社が清算結了登記後、元清算人からその登記前に売買によって所有権が移転している不動産について清算会社を代表して登記義務者として、清算結了前の日付による所有権移転登記を申請できると思いますがいかがでしょうか。また清算人は現存しておりますので、その者の個人の印鑑証明書を添付すればよろしいでしょうか。
〔答〕御意見のとおりと考えます。
≪類似の先例 昭28.3.16民甲383、昭30.4.14民甲708≫
また、今回の案件については、清算結了前に行なった売却が利益相反行為に該当するので、株主総会議事録(※清算人会設置会社であれば、清算人会議事録)を作成しなければなりませんでした。その利益相反行為の承認に関する株主総会議事録に押印する印鑑についても清算人個人の実印で押印・作成し、市町村長発行の個人の印鑑証明書添付でかまわないとの回答を法務局からいただきました。なお、利益相反行為の議事録については作成日は今現在でも、株主総会開催日は売却当時の日付にしてくださいとも言われました。そりゃそうですよね。
(※利益相反については、担当登記官の判断によって異なる可能性があります。)
会社法上もともと株主総会議事録には押印義務はありませんからね。しかし、登記手続きになると真正担保のために印鑑証明書を添付しなければならない関係で、どうしても押印しなければなりませんので、「う~ん、どうかなぁ。利益相反行為に該当する場合には、会社を復活させないといけないのかな?」なんて頭をよぎりましたが、議事録作成者のその印鑑も個人の実印でOKってことでご回答いただきました。
大変勉強になる案件に出会えて感謝です!!
【大阪!!】司法書士同期、そしてお初天神巡り
皆様、先日の三連休はどのようにお過ごしでしょうか?
私は、久しぶりに司法書士の同期合格の友人たちに会いに大阪に行ってまいりました!(^^♪
時が経つのは本当に早いですね。人生をかけて共に勉強した時期もはや7年も前になります。
受験時代の話題とは打って変わって、実務の話やビジネスの話に花が咲き、次のステージで活躍しているみんなの話はとても刺激になりました。一番苦しい時期に励ましあった仲間は一生ものです。これからもこの繋がりは大事にしてきたいと思います。今回会っていない同期たちとも次回声をかけて飲みに行きたいです!
そんな人生をかけて勉強していた時期に毎日通った神社があります。
帰り道、職場である北浜のほうから梅田向かって歩くのですが、途中に「お初天神」という神社があります。この神社には大変お世話になりました。
毎日、「将来司法書士になって人の役に立ちたい」と願い、見守っていてくださいと手を合わせていました。帰り道ということもありますが、数にすれば少なくとも2000回以上は手を合わせました。私は宗教に疎いですし、信心深いわけでもありませんが、自分へ言い聞かせるつもりで通っていました。
改めて訪問すると、青春だったな~なんて、しみじみ思います(笑)
いやっ、過去形ではなく、今も青春真っただ中です!!お初天神の神様に現状報告して、また次のステージで必死にもがいていきたいと思います!!
配偶者居住権とは?~2020年4月1日からスタート~
配偶者居住権とは?
配偶者居住権とは、亡ご主人様名義の自宅の所有権を奥様以外の人が相続したとしても、引き続き奥様が住み続けることができる権利です。
一般的には、夫が亡くなった後も、住み慣れた自宅で住み続けることを希望するのが普通です。特に、相続人である配偶者が高齢者である場合には、住み慣れた自宅を離れて新たな生活を始めることは精神的にも肉体的にも大変な負担となるとはずです。しかし、相続をきっかけとして配偶者が悲惨な想いをする事例が増えてきたため、配偶者を手厚く保護するために、たとえ自宅を相続しなくとも一生住み続けることができる権利を新設したのです。
配偶者居住権は、所有権ではなく「住む権利(居住権)」であるため、所有権をそのまま相続する場合と比べて評価額が低額になります。その分、老後資金となるお金を多く配偶者に相続させて配偶者の権利を保護しようとしたのが新設の目的です。
次の例をご覧ください。
【例】相続人が妻及び子1人、遺産が自宅(2000万円)及び預貯金(3000万円)だった場合。
妻と子の相続分=1:1(妻2500万円 、子2500万円)
(法務省ホームページ参照http://www.moj.go.jp/content/001263589.pdf)
〈配偶者居住権を利用しないケース〉
妻が相続する財産 ⇒ 自宅(2000万円)+預貯金500万円
子が相続する財産 ⇒ 預貯金2500万円
妻が自宅に住み続けることを前提として、自宅の所有権を妻が相続する場合は、自宅の価値2000万円分を相続したことになるため、預貯金は500万円しか相続することができません。これでは、住む場所はあっても老後の生活費が不足しそうで不安ではないでしょうか。
〈配偶者居住権を利用するケース〉
妻が相続する財産 ⇒ 配偶者居住権(1000万円)+預貯金1500万円
子が相続する財産 ⇒ 負担付き所有権(1000万円)+預貯金1500万円
※配偶者居住権1000万円は仮の価格です。
このように相続すれば、自宅に住み続けることができるし、老後の生活費も多く取得することができるため、安心して生活することができます。
配偶者居住権を取得するためには、どうすればよいか?
配偶者居住権が成立するためには、以下の要件をすべて満たしていなければなりません。
① 被相続人死亡時に、被相続人の所有である建物に配偶者が居住していること
② 遺産分割協議 or遺贈 or死因贈与により配偶者居住権を取得したこと
③ 被相続人が配偶者以外の者と共有持分を持っていないこと
まず、①の「被相続人死亡時に、被相続人の所有である建物に配偶者が居住していること」ですが、被相続人の死亡時に住んでいなければなりませんので、被相続人の死亡後に住み始めた場合は、配偶者居住権を取得することはできません。
次に②の「遺産分割協議 or遺贈 or死因贈与により配偶者居住権を取得したこと」については、遺産分割協議or遺贈or死因贈与の3つの取得方法があり、1つ目の遺産分割協議とは、「話し合い」のことです。相続人全員の間で話し合いをして配偶者居住権を設定することになります。2つ目の遺贈については、被相続人が生前に「妻に配偶者居住権を取得させる」旨の遺言を書いておいた場合のことです。3つ目の死因贈与という言葉はあまり馴染みがないかもしれません。死因贈与とは、「私が死亡したら、妻に配偶者居住権を取得させる」旨の贈与契約をすることです。通常の贈与と異なる点は、「死亡したら」という点です。通常の贈与については、契約したときにすぐに効力があるのですが、死因贈与は「死亡時に」効力が発生する契約になります。
遺贈と死因贈与は似ていますが、決定的に違うことがあります。遺贈(遺言)は、被相続人が1人で作成するものですので、いつでも1人で取り消すことができます。ところが、死因贈与は2人で行う「契約」ですので、片方が勝手に取りやめることができないのです。つまり、死因贈与の方が確実に実行することができるということになります。
配偶者居住権を取得するかどうかあらかじめ決めておけるのは、遺贈と死因贈与だけです。ご主人様が元気なうちに話し合って、配偶者居住権を取得するかどうか決めておくとよいでしょう。
③の「被相続人が配偶者以外の者と共有持分を持っていないこと」とは、「亡ご主人様の持分2分の1、Aさんの持分2分の1」のように奥様ではないAさんの名義が入っているなら配偶者居住権は取得できません、という意味です。ちなみに、このAさんはたとえ法定相続人であっても配偶者居住権を成立させることはできません。なぜなら、このAさんにとっては、配偶者が亡くなるまでずっと使用することができず、タダで居住を認めなければならないため、それはあまりに酷であるという理由からです。
しかしながら、相続人の間で配偶者居住権について揉めてしまうこともあるでしょう。その場合、配偶者は家庭裁判所に対して「配偶者居住権を認めてほしい!」と助けを求めることができます。家庭裁判所の中での話し合い(「調停」といいます。)で解決できない場合は、最終的に「審判」といって家庭裁判所に決めてもらうのですが、このときに家庭裁判所が配偶者に配偶者居住権を認めるためにはある条件があります。その条件とは、「建物の所有者が建物を使えなくなるデメリットを考慮してもなお、配偶者に配偶者居住権を取得させる必要性が特に高い」事情があることです。
では、その必要性って具体的にどのくらいなのかという疑問があると思われますが、こればかりはケースバイケースで家庭裁判所が判断するため、これからの判例の蓄積を待つしかありません。しかし、配偶者の住む場所を確保するための法律ですので、多くのケースで「必要性が高い」と判断されると考えられます。
配偶者居住権を使って、他人に貸すことができる!!
配偶者居住権とは、住む権利です。あくまで所有権は持っていないため、自分の物としていい加減に使用してはいけません。よって、善良な管理者の注意をもって(「善管注意義務」といいます。)使用しなければなりません。難しく聞こえるかもしれませんが、要は、賃貸アパートを借りているつもりで使いましょうという程度のものです。したがって、建物の改築・増築をしたいときには所有者の承諾を得なければならないことになっています。
同じ理屈で、配偶者居住権は誰かにあげることはできません。「配偶者」居住権なのですから、配偶者だけが特別に認められた権利なのです。
ところが面白いことに、この配偶者居住権は、あげることはできないけれども、他人に貸して賃料をもらうことはできるのです。貸すためには所有者の承諾は必要になりますが、貸すこともできるという柔軟な取り扱いは、残された配偶者にとって大変ありがたいのではないでしょうか。
いくらで貸せるかについては、これは貸主と借主の合意ですので、お互いさえよければ、相場より高く貸すのも、安く貸すのも自由です。まずは、近隣の相場を参考にしてみるのがよいでしょう。
配偶者居住権を「期間限定」とすることもできる!
配偶者居住権は「期間限定」とすることも可能です。前述した遺産分割協議 or遺贈 or死因贈与の中で「配偶者居住権は令和〇年〇月〇日まで」のように期間を定めておけば、そのときまでとなります。
ただし、この期間限定の定めは、定めることができるのであって、特に何も期間を定めなければ、配偶者が亡くなるまで(終身間)効力があります。つまり、「原則として、死ぬまで」というわけです。
なお、期間について「当分の間」とか、「別途改めて協議するまでの間」等、他人から見て不明確である定め方は認められませんので注意が必要です。誰が見ても、「配偶者居住権は、〇年〇月〇日までの期間である」とはっきりわかるように定めるなければいけません。
配偶者居住権は「登記」をしなければ、その権利を主張できない!
まず「登記」とはなんでしょうか。世の中の不動産(土地や建物)には、「この土地はAさんのもの」「この建物はBさんのもの」のように名札が貼ってあるわけではありません。建物に表札があったとしても、もしかしたら住んでる人は借りているだけで、所有者は別の人かもしれません。
それではどうすれば「この土地は〇〇ものだ」ということがわかるのかというと、あまり知られていませんが、不動産については全国の法務局に「所有者が誰か、この不動産を担保に銀行からいくら借りているか」等のデータが保管されています。これを「登記」といいます。例えば、AさんからBさんに所有者が変わった場合は、よくAさんからBさんへ「名義変更した」等といいますが、これを正式には「登記した」というのです。この登記をしなければ、法律上「この土地は私のものだ」と他人に主張することができないことになっています。
この登記情報を調べると、その不動産は過去にどのような歴史を持っているか(過去の所有者の変遷等)がすべてわかりますので、いわば「その不動産についての戸籍」のようなものです。
この登記情報は、他人に公開することを目的としているため、法務局に行けば誰でも調べることができます。つまり、お隣さんが、いつ土地を買って、その土地を担保に銀行からいくら借りているのか、誰でも簡単に知ることができるのです。さらにいえば、北海道の人が沖縄の土地の所有者を調べることもできます。
これを知ると、「なぜそんな個人情報を公開しているんだ!」と怒る方もおられますが、むしろ公開していないとマズイのです。考えてもみてください。例えば、あなたが土地を買おうと検討している場合、その土地の所有者が誰なのかどうやって調べますか?自己申告なら、詐欺が横行するでしょう。誰が本当の所有者であるのかわからないのに、「私が所有者だ」と自己申告している人に何千万円も支払えるでしょうか。権利証を持っているかどうかで判断すればいいと思うかもしれませんが、権利証を紛失している方なんてざらにいます。このような理由で「登記」は公開されている必要があるのです。
ようやく本題に入りますが、配偶者がこの配偶者居住権を他人に主張するためには、登記をしなければなりません。何も問題なく住んでいるときは、登記があることのありがたみは感じることはありませんが、登記がないと大変な問題になることがあるのです。
例えば、次のようなケースです。
相続人間の遺産分割協議によって、自宅の所有者は長男Bにして、配偶者であるAには配偶者居住権を設定したとします。それを相続人全員で遺産分割協議書にまとめて保管しているのですが、所有者を長男Bとする所有権移転の登記はしたものの、Aの配偶者居住権の登記はしなかったとします。
長男Bは所有者ですので、Aに承諾を得ることもなく、勝手に他人であるCに売却することことができます。そうすると、所有者(登記名義人)となったCはAに対して「この家は俺のものだから、出ていけ!」ということができます。AはこのCの言うことを聞いて自宅を出ていくしかありません。
もし、Aがちゃんと配偶者居住権の登記をしておけば、Cに対して「私は配偶者居住権を持っているから出ていきません。」と突っぱねることができます。これを法律用語では、「AはCに対抗することができる」といいます。Cはいくら所有権の登記を持っていたとしても、Aの配偶者居住権の登記が「先に」入っている以上、自分では使用できないものを買ったことになるのです。登記は早い者勝ちです。つまり、Aが死亡するまではC は使用できないということになります。
Cは気の毒ではありません。なぜなら、CはBから買う前に登記記録を確認しておけば、Aの配偶者居住権の登記があることはすぐにわかるからです。(※)
※ちなみに、通常の不動産取引では司法書士が間に入って取引することが多く、司法書士が代理で行なう場合は、職務として取引物件の確認・本人確認・意思確認を怠ることなく取引を行ないますので、このような不測の事態になることはありません。よって、司法書士を間に入れることで安心して取引を行なうことができます。司法書士に支払う報酬は、書類作成代や登記申請代だけでなく、法的に安全な取引ができるという安心料と責任料も含まれているのです。
配偶者居住権の期間の定め方について、「当分の間」とか、「別途改めて協議するまでの間」等、他人から見て不明確である定め方は認められませんと前述しましたが、その本当の理由は、他人に公示することが登記の目的だからです。他人が登記記録を確認しても、結局いつまで配偶者居住権が存続するのかわからなければ意味がありません。
なお、配偶者居住権の登記を行なうためには、所有者と配偶者との共同で申請する必要があります。手続きが難しい場合は、登記の専門家である司法書士に相談しましょう。
配偶者居住権の登記をすることの意外な落とし穴
これまでの記述で、登記をすることがいかに大事であるかお伝えしました。登記がなければ、本当の意味で配偶者の権利を守ったことにはなりません。しかし、これらの法律的な視点ではなく、「司法書士実務」の視点からは、意外な落とし穴があります。
それは、配偶者(奥様)が認知症になるリスクです。例えば、奥様が認知症になり、家族での介護が難しい状態となったため、所有者である息子様が奥様の介護施設入居費用を捻出するために(奥様を扶養するための費用にあてるために)自宅を売却しようとする場合に問題が発生します。
配偶者居住権の登記がされている場合、買主であるCは、配偶者居住権の登記を消すことを求めます。なぜなら、配偶者居住権の登記がされている状態で買っても、CはAに負けてしまうのですから、Cからすれば配偶者居住権の登記を消すことを条件に売買するのは実務上当然のことです。(以後、登記を消すことを「抹消登記」といいます。)
自宅を売却する前提となる抹消登記の申請についても、配偶者居住権の設定をするときと同様に所有者である息子様と奥様の共同で申請しなければならないのですが、そのとき奥様は認知症のため申請に協力することができないという事態になります。認知症になって意思表示ができないということは、つまり「登記申請する」という意思表示もできないということになるため、配偶者居住権の抹消登記が申請できません。よって、事実上Cへの売却は不可能となるのです。これでは奥様が亡くなるまで、売却はできなくなります。
もしかしたら、「母のために売却するんだから、そんなの勝手に抹消登記して売ればいいじゃないか。」と思う方もおられるかもしれませんが、実際はそうはいきません。母(奥様)からすれば自分の知らないうちに勝手に住む権利を消されることになるのですから、それは違法な手続きです。仮に司法書士に依頼しても、司法書士は本人の意思確認を必ず行ないますので、意思の確認ができないとわかれば手続きをお断りされます。
このあたりは、実務上非常に難しい問題です。
この配偶者居住権の登記は義務ではないため、配偶者居住権の合意はするが、登記はしないという選択も考えられなくはありません。しかし、登記をしないのならば、奥様は前述の通り不安定な状態におかれることを覚悟しなければなりません。
このような事態が起こり得るため、私としては、もし自宅を売却することがあらかじめわかっているのであれば、配偶者居住権を利用しない方がよいと考えており、このような場合は家族信託をオススメします。家族信託であれば、奥様は安心して自宅に住み続けることができ、万が一奥様が認知症になったとしても、息子様は奥様のために自宅を売却することができるのです。このケースでいうと、自宅は奥様が相続し、その後に奥様と息子様で家族信託の契約を行なう流れになります。
ただし、家族信託を利用する場合は、一度奥様が自宅の所有権の価値をまるまる取得することになるため、配偶者居住権を利用する場合に比べて奥様のもらえる現金が減ることになりますので注意してください。(きっちり法定相続分で遺産分割することを前提としています。)
配偶者が死亡した後の手続きはどうなる?
配偶者が死亡した後の手続きは、シンプルです。配偶者居住権は、配偶者の死亡により消滅しますので、所有者は、配偶者居住権の負担のない「完全な所有権」を持つことになります。
なお、配偶者居住権の登記は自動的に消えるわけではありませんので、抹消登記を行なう必要があります。所有者が単独で抹消登記を申請することができますので、大きな負担になることはないでしょう。
【初心忘るべからず】開業当時に撮った写真📷
平成30年9月13日に今の事務所に移転をしました。
前の事務所はプレハブで、父が測量士として30年前に開業した事務所でした。元々は倉庫を事務所として使っただけのようで、私はその事務所の机を1つ借りて開業したのでした。
ちなみに父は畑違いの「測量士」なので、同じ場所で働いてはいますが、仕事で連携することはほとんどありません(笑)
最初は「こんなボロボロな事務所でやりたくない。恥ずかしい。」と思っていましたが、この事務所が幼い頃から自分を食べさせてくれたんだなと思うと、なんだか感慨深いものがありました。
場所はわかりにくいし、駐車場もわかりにくい。お客様は事務所にたどり着けない。夏は灼熱、冬は極寒の不便極まりない事務所でしたが、最近はそんな自分を育ててくれた事務所、そして両親への感謝を忘れてはならないと思って、開業当時の写真を事務所に飾りました。
これから先、事務所を経営していく中で色々あると思います。開業当時の志を忘れないように、驕ることなく、常にお客様の方を向いて努力していきたいと思います。
今後とも、みなと司法書士・行政書士事務所を宜しくお願い致します。
【抵当権変更登記】単独の債務者から連帯債務者への免責的債務引受 ~保証債務の債務引受~
備忘録として、抵当権変更登記の免責的債務引受契約にいて書きたいと思います。
【登記記録】
抵当権者 A保証会社
債務者 B
所有者 C・D
(※本抵当権変更登記の前提として、BからC・Dへ所有権移転登記を行っています。)
こちらの状態で、債務者 BからC・Dが免責的債務引受契約を行い、変更後の事項を「連帯債務者 C・D」としたいとのご相談が某銀行からありました。
よくあるパターンでは、「債務者 B→債務者 C」だったり、「債務者 B→連帯債務者 B・C」とする重畳的債務引受だったりするのですが、今回は、BからC・Dに免責的に引き受け「C・Dの連帯債務」にするとのことでした。
某銀行にもA保証会社にもこの様式がなかったようで、そもそも1つの契約で大丈夫なのかということのリーガルチェックと、契約書作成のご依頼を受けました。
私は民法上も登記上も全く問題なく1つの契約書及び1件の登記申請で可能との感触を持ったのですが、意外にも珍しいパターンであるため、念のため法務局にも確認したところ「過去の先例にもないし、書式にもないので、調査の時間をください」とのこと。
3日待ってようやく「貴見のとおり」との回答を得られました。
登記原因証明情報は以下のとおりです。(契約書は長文になるので割愛します)
登記原因証明情報
平成 年 月 日
〇〇法務局 御中
1 登記申請情報の要項
(1)登記の目的 抵当権変更
(2)登記の原因 平成 年 月 日免責的債務引受
(3)変更後の事項 連帯債務者 C・D
(3)当 事 者 権利者 A保証会社
義務者 C・D
(4)不動産の表示 省略
2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)平成 年 月 日、債権者 A保証会社および債務者Bと引受人C及びDは、本件不動産上の抵当権(平成年月日〇〇法務局受付第〇〇号)の被担保債権である平成 年 月 日付保証委託契約によるBのA保証会社に対する求償債務について、C及びDが連帯債務者として免責的に引き受ける旨の免責的債務引受契約を締結した。
(2)平成 年 月 日、C及びDは、前項の免責的債務引受けについて同意した。
(3)よって、同日、本件抵当権の債務者は連帯債務者 C及びDに変更された。
上記の登記原因のとおり相違ありません。
設定者 C・D(署名押印)
様式・書式がなくても、民法と不動産登記法の原理原則に基づいて書類を作成できるのがプロってもんですよね☺ワクワクするような仕事に出会えたことに感謝いたします!!
【法改正】2020年7月10日から、法務局に自筆証書遺言を保管してもらう制度が創設されます!
2020年7月10日から、法務局に自筆証書遺言を保管してもらう制度が創設され、家庭裁判所による遺言の検認手続きを省略できるようになります。
自筆証書遺言と公正証書遺言の効力の一番の違いは、検認手続きが必要か不要かという点にあるといえますので、改正後においては自筆証書遺言作成の促進が期待されています。なお、公正証書遺言については法務局に保管申請することはできません。(公正証書遺言については、原本が公証役場に保管されています。)
検認手続きとは、家庭裁判所に相続人全員が集まって、遺言書が検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。その「内容」が有効か無効かを家庭裁判所が判断する手続きではありません。
≪※「形式上有効な遺言書」と、「実際に使えるか遺言書」というのは、全く違います。どういうことかというと、形式上有効であっても、財産の特定が不十分であったり、本当に遺言者本人が書いたものか特定できなかったり、さらには財産をあげたい人が特定されていなかったりして、実際の手続きを行う銀行窓口や法務局でお断りされることがあるのです。≫
この検認手続きは、相続人全員の戸籍をすべて集めてから、家庭裁判所に検認の申立てを行い、その後に家庭裁判所から相続人全員に対して「〇月〇日に検認手続きを行いますよ」という通知がされる流れになります。
この申立てはさることながら、その前の相続人全員の戸籍集めの段階で手間取ることがよくあります。なぜなら、戸籍謄本というのは、自分の両親・祖父母・子・孫など直系の血族のものは自分だけで取得できますが、兄弟姉妹などの横並びの血族(傍系血族といいます。)の戸籍謄本は、勝手に取得することができないからです。
つまり、兄弟姉妹の仲が悪かったり、連絡がつかなかったりして手続き協力が得られない場合は、申立て前の戸籍集めの段階で苦労することになるのです。自分で取得できない場合は、司法書士又は弁護士に依頼して、職務請求により戸籍収集をしてもらうしかありません。
想像してみてください。
せっかく、世話になった子にすべての財産を相続させてやろうと思って遺言を書いていても、結局その子は兄弟姉妹の協力を得るしかないという状況が発生するのです。専門家に支払う無駄な費用が発生するし、検認手続き時にわざわざ「すべて自分のものになる」という内容の遺言を兄弟姉妹に見られるのですから、気まずい空気になるのは容易に想像できるでしょう。
法務局での具体的な保管申請手続き
遺言者は、自筆証書遺言を作成し、法務局に出向いてその保管の申請をすることができます。遺言書の保管申請は、「遺言者の住所地もしくは本籍地」又は「遺言者が所有する不動産の所在地」を管轄する法務局(正式には、遺言書保管所といいます。)の遺言書保管官に対して行う必要があります。
申請の際に特に注意しなければならない点として、次の2点があります。
①本人が自ら出頭すること
②遺言書の封筒の封をせずに持参すること
①について
遺言というものは本人しかできず、代理で行うことができません。この考え方は公正証書遺言においても同じです。遺言者が管轄法務局に自ら出頭した際に、遺言書保管官は遺言者の本人確認を行わなければならないことになっています。
②について
遺言書保管官は、遺言者が持参した自筆証書遺言の適合性を確認してから受付をするため、封をせずに持参しなければなりません。これを聞いて多くの方は「遺言書保管官がちゃんと確認してくれるから安心だ!」と思われたのではないでしょうか。
実はここに落とし穴があります。
遺言書保管官は、保管申請に係る遺言書について、法律で決められている最低限度の「外形的」な確認・適合性の審査を行うだけで、その遺言書の「内容」が適法・有効であることを認めて受付するわけではないのです。
【詳細な取り扱いについては、その他制度の創設に当たり所要の規定の整備を行うものとしています。】
つまり、遺言書保管官は、審査の時点で「明らかに無効」な遺言書であれば、「これは無効な遺言書だから、やり直してください。」と教えてくれますが、その遺言書が①本文・日付・氏名の自書、②押印、③加除訂正の方式が外形的に有効でありさえすれば、その内容が適法か有効かの確認をすることなく受付されてしまいます。遺言書保管官は、「外形的」な有効・無効の確認義務はありますが、「内容」の適法性・有効性の確認義務は負わないことになっているのです。
しかし、このような取り扱いになるのは仕方のないことだと思います。法務局がすべての自筆証書遺言の適法性・有効性を確認の上、保障することは現実的ではありませんし、万が一、その受付した遺言書が裁判所に無効と判断されてしまった場合、法務局の責任問題になってしまうためです。
同じ理由で、外国語による遺言書の保管申請があった場合に、仮に法務局において遺言書の内容が判読することができないとしても、法務局は保管に係る遺言書が自筆証書遺言の方式で作成された遺言であるかどうかを確認することができればよく、その他の適法性・有効性まで確認すべき義務を負わないため、外国語による遺言を保管の対象から外す必要はないと考えられています。
保管制度を利用しても残る煩わしさ ~公正証書遺言との違い~
当該遺言書の保管を申請した遺言者の相続人は、遺言者の死亡後、法務局に保管されている遺言書についての遺言書情報証明書の交付を請求することができます。
相続人は、この遺言書情報証明書を使って相続登記や銀行手続きを行うことができます(遺言書の原本を返してもらうことはできません)。なお、遺言者の生存中は、遺言者のプライバシー保護の観点から、相続人は当該遺言書情報証明書を交付請求することができません。
この遺言書情報証明書の交付申請をすると、遺言書保管官は速やかに「遺言書を保管している旨」を遺言者の相続人全員並びに受遺者・遺言執行者(遺言を執行するように指定されている人のことです。)に通知しなければならないことになっています。要は、関係者全員に「ここに遺言書を保管しているよ」と通知するのです。そして、この通知をするために法務局は、検認手続きと同様の書面(相続人全員の戸籍一式)を求めることになるといわれています。
【詳細な取り扱いについては、その他制度の創設に当たり所要の規定の整備を行うものとしています。】
つまり、法務局に遺言書を保管しておけば、検認手続きが不要になって便利ではありますが、結局のところ遺言書情報証明書を交付申請する方は、相続人全員の戸籍収集をしなければならない羽目になります。
この点、公正証書遺言においては、法務局や銀行窓口で使用する際に、相続人全員の戸籍収集は不要ですし、相続人全員へ通知がなされることはありません。何も手続きを踏まずに、すぐに各窓口で使用することができます。自分で集められる範囲の戸籍だけを集めて、速やかに手続きを完了されることができるのです。
①自分で保管した場合の自筆証書遺言、②法務局で保管した場合の遺言、③公正証書遺言の3つは、法律的な効力は全く同じですが、手続きの煩雑さは大きく異なるものになります。次の表にまとめましたので確認してみてください。
|
自筆証書遺言 (自分で保管) |
自筆証書遺言 (法務局で保管) |
公正証書遺言 |
相続人全員の戸籍収集 |
必要 |
必要 |
不要 |
相続人全員への通知 |
裁判所から検認期日の通知あり |
法務局から通知あり |
なし |
検認手続き |
必要 |
不要 |
不要 |
自筆証書遺言は、今回の相続法改正によってより身近なものになると思われますが、公正証書遺言と比べると、相続人はかなりの労力をかけて手続きを行う必要があることを理解しなければなりません。自筆証書遺言の検認手続きや相続人の全員の戸籍収集の際にかかる専門家費用と、公正証書遺言作成の際にかかる専門家費用はそれほど変わるものではありませんので、コストと労力の費用対効果を考えるとどちらが良いのかは明白です。
どの方式で財産を遺すべきか、人によって様々な意見があると思います。
しかし、財産を遺すお世話になった人のことを想うのであれば、公正証書遺言で作成してあげることが一番の思いやりであると私は思います。
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【法改正】2019年1月13日から始まった「自筆証書遺言の方式が緩和」についてはこちらをクリック
【法改正】今日から遺言作成のルールが変わります!!どのように変わったか解説
2019年1月13日から自筆証書遺言の方式が緩和されました。
そもそも自筆証書遺言というのは、法律で決められた形式どおりに書かなければ無効となりますが、その要件が一部緩和されたのです。
画像は著作権フリー © タイトル:ブラックジャックによろしく 著作者名: 佐藤秀峰
2019年1月12日までの方式【旧法】
2019年1月12日までの自筆証書遺言が有効となる要件としては、「全文自書」で「日付」「氏名」「押印」があれば、有効とされておりました。これらの要件が1つでも欠けていれば、どんなに丁寧に内容を書いたとしても無効です。
私が実際に出会った遺言書の中には、内容をパソコンで作成し、氏名のところだけ自書し、実印が押印してあり、さらに印鑑証明書まで添付されてあるものがありました。
さて、この遺言書は有効だと思いますか?
この自筆証書遺言は無効です。なぜなら、有効となる要件の1つである「全文自書」の要件が満たされていないからです。その自筆証書遺言書を持ってきた相続人の方は、泣く泣く法律で定められたとおりの持分で相続をしなければならない羽目となってしまいました。
ちなみに、自筆証書遺言は勝手に開封してはいけません。映画のイメージで、遺言書は相続人が全員集まったところで弁護士が開封して読み上げるものだと思っていませんか?実は勝手に開封してしまうと5万円以下の過料を処されます。意外な規定が民法にしっかりと規定されているので、ご注意ください。
それでは、封筒に入っていない遺言書は無効なのか?といえばそんなことはなく、封筒に入っていない裸の遺言書であっても有効です。なぜなら、民法に「封筒に入っていなければ無効」とはどこにも書かれていないからです。ただ、普通の感覚として、封筒に入れますよね(笑)
他にも意外なところとしては、「鉛筆で書いていても有効」であることや「実印ではなく、認印、拇印でも有効」などがありますが、いずれも真実性が確認できないと主張される可能性がとても高いので、いずれも避けるべき方法です。逆に、自書である必要性から、点字機で打った遺言やテープレコーダー・動画による遺言は無効です。このように意外に思われるような細々とした規定や判例が数多くありますので、わからないことがあったら速やかに司法書士等の専門家に相談したほうが賢明です。
2019年1月13日からの新方式
2019年1月13日からの新方式は今までの自筆証書遺言が有効となる要件であった「全文自書」で「日付」「氏名」「押印」がある、のうち「全文自書」という要件を一部緩和しました。
具体的な内容としては、全文自書ではなく、「財産目録」の部分についてはパソコンで作成したり、銀行通帳のコピーを添付したり、不動産の登記事項証明書のコピーを添付したりしてもOKになりました。なお、この場合、遺言者は自書ではない部分があるすべてのページに署名・押印をしなければなりません。自書ではない部分がその紙の両面にある場合においては、その両面に署名・押印が必要です。
ちなみに、遺言書が複数枚になる場合において、契印(書類が連続していることを示すために、紙と紙の間に重なるように押印すること)をしていることは有効となる要件にはなりませんでした。つまり、契印がなくても有効ということです。これは2019年1月12日以前でも同じですが、遺言書に契印があることを要件にしてしまうと、無効となる遺言書が多発して実務が混乱する可能性が高いために要件から外れました。とはいえ、契印がある文書が正式な法的文書ですので、皆さまが自筆証書遺言書を作成する場合は必ず契印をして作成してください。
自筆証書遺言の内容に加除・訂正する場合には、厳格に方式が決められています。具体的には、遺言者が、①加除・訂正の場所を指示し、②これを変更した旨を付記して特にこれを署名し、かつ、③その変更の場所に印を押印しなければならないとされています。
これらの具体的な記載方法は次の資料を参考にしてください。
※画像は法務省ウェブサイトより
改正後方式のメリット・デメリットとは?
一見、いいことづくめに見える法改正ですが、私の個人的な意見を述べさせていただくと、無効な遺言書が今まで以上に増えると考えています。この自筆証書遺言に関する改正は、確かに書くことが減って負担は軽減されますが、かえって書き方が難しくなったように思います。
例えば、自書でなくてもよくなったのは「財産目録」の部分についてだけです。何を誰に相続させる等を記載する「本文」については、ちょっとでもパソコンで作成してしまうとすべては無効な遺言書となってしまうのです。一般の方の中には「改正でパソコンで作成してもよくなったんだ!」と勘違いされる方も相当数おられるのではないかと私は危惧しています。
さらにいうと、私が実務上今まで見てきた自筆証書遺言の中で「財産目録」が詳細に書かれているものはそこまで多くありません。むしろ、よほどの資産家でない限り、ほとんど書かれていないといってもいいかもしれません。
実際の自筆証書遺言で多いのは、「一切の財産を妻A子に相続させる。」であったり、せいぜい「すべての不動産は長男Bに相続させる。その他の一切の財産は妻A子に相続させる。」や「甲不動産は長男Bに相続させる。乙不動産は二男Cに相続させる。」など、割とざっくりしたものが多いのが現状です。財産が多岐に渡り、それを詳細に分け与えたいという方については、今回の改正はメリットですが、専門家からすればその場合は公正証書遺言を作成すべきケースといえるため、自分だけで自筆証書遺言を作成することは全くおすすめできません。
この改正による恩恵をうける層はそう多くはないのではないか?むしろ、無効な遺言書の作成を助長してしまうのではないか?というのが私の見解です。繰り返しになりますが、公正証書遺言を作成することをオススメいたします。
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2020年7月10日から始まる「法務局での自筆証書遺言の保管制度」の条文を読んでみましたが、メリットばかりではありません。公正証書遺言と比べると、大きなデメリットがありますので解説します。
⇩ ⇩ ⇩
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抵当権変更登記「連帯債務者2名のうちの1人が死亡した場合」
今回は自分の備忘録として、抵当権変更登記について書きたいと思います。
【登記記録】
抵当権者 甲銀行
連帯債務者 A、B
【事例】
①Bが死亡
②Bの相続人間での遺産分割の結果、Aのみが債務を承継
③甲銀行は当該債務の遺産分割を承認
申請書は以下の通り。
【申請書】
登記の目的 抵当権変更
原因 平成年月日連帯債務者Bの相続
変更後の事項 連帯債務者 A
(以下、省略)
私は最初、変更後の事項については、もはや債務者はAのみであるので「債務者 A」とすべきかと思いましたが、
法務局の回答としては「連帯債務者たる地位をAが相続したのだから、1人になったとしても連帯債務者Aとすべき」というものでした。
抵当権の登記で、債務者が1人なのに「連帯債務者」という表示がされているものに出会ったことがなかったので、かなり違和感があります。
法務局の見解も理解できるので、確かに登記技術上は「連帯債務者A」とすべきとも考えられますね。
確かに「連帯債務者」としての地位が併存しているので、その通りですが、
私見では、すでに債務者は1人なのだから、もはや「連帯債務者」と表示されるのは、違和感がありました。
ちょっと書き留めておきたい内容でしたので、今回はマニアックなブログでした(^^♪
一般の方からしたら「そんなのどっちでもいいじゃないか」と感じられるかもしれませんが、司法書士という仕事は、このような物事を大真面目に頭を悩ませて、条文・先例と睨めっこしているのです(笑)
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