任意後見契約とセットで準備しておきたい5点セットとは?

前回に引き続き、任意後見に関する記事を書きます。

任意後見契約を行なうと決めたのであれば、是非ともセットで検討してほしいのが次の5つです。

 

任意後見契約

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(1)見守り契約

(2)公正証書遺言

(3)家族信託契約(民事信託契約)

(4)尊厳死宣言

(5)死後事務委任契約

 

(1)見守り契約

 見守り契約とは、任意後見が始まるまでの間に、支援する人が定期的に本人と連絡を取ったり訪問したりすることにより、支援する人が本人の健康状態や生活状況を確認することによって、任意後見をスタートさせる時期を判断するための契約です。

 任意後見契約だけを契約しても、いざ判断能力が落ちて、任意後見契約の効果をスタートさせたいときに、それを後見人が知らないのであれば契約した意味がありません。そこで任意後見契約とセットで見守り契約をすることにより、より安心して生活を送ることができます。

 

(2)公正証書遺言

(3)家族信託契約(民事信託契約)

公正証書遺言と家族信託契約は、相続対策・認知症対策において非常に有効な手段ですが、どちらも認知症になってしまっては、もはや行なうことができません。残念なことですが、どちらの手続きも、いざ認知症の疑いが出てきたときに、本人の親族が「今のうちに何か対策できることはないか?」と焦ってご相談に来られることが多いです。そうなってからではすでに遅い場合があるので、任意後見契約を検討されている方は、今まさに元気なときにセットで検討してみてはいかがでしょうか。

公正証書遺言については第2章で、家族信託については第7章で詳しく解説しておりますので、そちらをご覧ください。

 

(4)尊厳死宣言

 「尊厳死」とは、回復の見込みのない末期状態の患者に対し、生命維持治療を差し控え又は中止し、人間としての尊厳を保たせつつ、死を迎えさせることをいいます。「尊厳死宣言公正証書」とは、本人が自らの考えにより延命措置を控え、中止する宣言をし、公証人がこれを公正証書にするものです。

近年、過剰な延命治療を打ち切って、自然な死を望む人が多くなってきました。医療の進歩により、患者が植物状態になっても長年生きている例がきっかけとなり、単に延命を図る目的だけの治療が、果たして患者のためになっているのか、逆に患者を苦しめ、その尊厳を害しているのではないかという問題提起から、本人の意思を尊重するという考えが重視されるようになりました。そして、単なる死期の引き延ばしを止めることは許されるのではないかと考えられるようになったのです。

 また、医師の視点からすると、延命措置をしないという判断をすることは医師として非常にリスクの高い行為であるため、延命措置を中断しない場合もあり得ます。そのため、医師の免責の観点からしても「尊厳死宣言公正証書」で作成されていることで、本人の尊厳死が守られることもあるのです。

 なお、この尊厳死宣言公正証書は、日本公証人連合会の初調査で平成30年1~7月の7カ月間で978件も作成されていることがわかりました。これからさらに増えていくことが予想されます。

 

(5)死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、主に葬儀や埋葬に関する事務を委託する契約のことです。

本人(委任者)が、受任者に対し、自己の死後の葬儀や埋葬に関する事務についての代理権を付与して、自己の死後の事務を委託する委任契約を「死後事務委任契約」といいます。

 

【死後事務の内容】

・医療費の支払いに関する事務

・家賃・地代・管理費等の支払いと敷金・保証金等の支払いに関する事務

・老人ホーム等の施設利用料の支払いと入居一時金等の受領に関する事務

・通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務

・菩提寺の選定、墓石建立に関する事務

・永代供養に関する事務

・相続財産管理人の選任申立手続に関する事務

・賃借建物明渡しに関する事務

・行政官庁等への諸届け事務

・以上の各事務に関する費用の支払い

 

最後の自己表現として葬儀の内容を具体的に指定したり、散骨を埋葬の方式として指定したりする場合には、遺言者が生前に遺される方々に対して希望をお伝えし、実際に葬送を行なうことになる人々との話し合いや準備をしておくことが大切です。

遺言では、遺言者の希望する葬儀が確実に行なわれるようにするために、祭祀の主宰者を指定することも必要になりますし、遺言執行者を指定して、その遺言執行者との死後事務委任契約を締結する方法も考えられます。

 

この任意後見契約プラス5点セットを準備しておくことによって、身上監護と財産管理を万全なものとした上で、死後の相続、相続財産の管理、または処分および祭祀の承継に紛争を生じないようにすることができます。何も6点全部を準備する必要はありません。ご自身に必要だと思うものを準備しておけばそれで十分ですので、まずは司法書士や弁護士をはじめとする相続の専門家に相談してみることをオススメします。

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